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六角堂(山口市秋穂東中条)

2023年12月10日

六角堂(1)

山口県山口市秋穂東中条の六角堂とは?

大内義弘が、京都の六角堂から勧請しました。京都の六角堂は、聖徳太子ゆかりのお堂で、本尊は如意輪観音です。こちらの六角堂も、京都のお堂にそっくりの六角形で、本尊はやはり如意輪観音です。

大昌寺の境外仏堂として、二十一年毎のご開帳の際には、寺院にて盛大に供養が執り行われていました。大昌寺も、元長徳寺といい、大内弘貞が創建した寺院であった、と伝えられています。現在は廃寺と合併するなどして往時ほどの荘厳さはないようです。

六角堂も、長い長い石段を上がった先に、ひっそりと佇んでいます。お堂のほかにはほぼ何もなく、見られるのは堂宇だけです。

六角堂・基本情報

所在地 〒754-1101 山口市秋穂東中条 1322
本尊 如意輪観音
(参照:住所は Googlemap のもの、本尊は現地案内看板)

六角堂・歴史

参詣前に分っていたことはわずかに以下の情報だけです。

六角堂
所在地 山口市秋穂
開基 大内義弘
摘要 京都六角堂を勧請、大改築された 

出典:大内文化探訪会『大内文化研究要覧』67ページ

現在、このお堂は一人寂しくぽつねんと建っている感じでして、地元の方にお伺いしたところでも、ほとんど訪れる方もないようです。

「が」じつはこのお堂、それ単体ではなく、大昌寺という寺院の境外仏堂だった模様です。それならばということで、大昌寺について調べようと思いましたが……よく見ると、大昌寺さまは同じ秋穂にあり、『研究要覧』にもきちんと載っておりました。つまりは、ご一緒に参詣すればよかったのですが、リストから漏れておりました……涙。しかし、『研究要覧』でも、独立した項目となっておりますので、大昌寺さまについては、次回あらためてのご参詣とし、まずは六角堂だけを見ていくことにいたします。

大昌寺(山口市秋穂)

元は長徳寺といい、大内弘貞が創建した寺院
大内氏の時代には大伽藍で、とても繁栄していた
明治時代に、禅昌寺末寺だった寺院と合併
参照:『山口県寺院沿革史』

この大昌寺の「境外仏堂」が六角堂で、『寺院沿革史』には以下のようにあります。

「六角堂は天明元年(※明らかに誤植。天明は江戸時代の元号。あるいはその後再建された年か?)、大内義弘が京都の六角堂からここに移したという。本堂:八坪、通夜堂、庫裏、境内:百十六坪、なお、六角堂は二十一年毎の開扉(=開帳)。本尊:如意輪観音八寸、行基の作という」

京都の六角堂は、寺院さまHPによれば、聖徳太子ゆかりのお堂で、本尊は如意輪観音だそうです。義弘は在京中に、六角堂を見て、領国への勧請を思いたったのでしょうか。大内氏の始祖・琳聖は、百済から聖徳太子に会うために遙々海を越えてやって来た、というのが大内氏の先祖伝説です。しかし、伝説が完成するのは、大甥・政弘期に『大内氏多々良譜牒』が書き上げられた時です。政弘の祖父にして、義弘の弟・盛見が先祖伝説と聖徳太子を結びつけた最初の人物とされていますが、義弘期にもそのような考え方がすでにあったのでしょうか。それとも、単に、聖徳太子伝説の流行によって同じものを山口にも、と考えたのでしょうか。

本人に尋ねてみることができない以上、義弘の心の中まではわかりません。しかし、のちの世の人々からしたら、琳聖とゆかりが深い聖徳太子のお堂が勧請されているという事実は、先祖伝説をますます輝かせたに違いないと思います。だとすれば、大伽藍であったという大昌寺、そして、その境外仏堂だった六角堂の往時の繁栄ぶりが目に浮かぶようです。

現地案内看板にも、ご開帳の際には、大昌寺で、盛大な供養が行なわれていたと書いてありました。

それらを輝かせた先祖伝説の主たちが去った後、そして近代化の中で寺社の統廃合が進む中、寺院もお堂もかつてほどの華やかさは失ってしまったであろうことは容易に想像がつきます。しかし、いまもなお、こうしてその姿を拝むことができるというのは、また別の意味で非常に感慨深いものがあります。

六角堂・みどころ

文字通り京都の六角堂そっくりです。見ての通り真新しいので、大内義弘が勧請した時の面影はないと思います(形は同じと思いますが。多分)。以前は秋穂八十八箇所札所の一つだったそうで、すべて回ったというタクシーの運転手さんのお陰で、道に迷うこともなくスイスイ到着。現在も札所なのか分りませんが、いずれにしても、ここは無人ですので、「この場所では」御朱印も含め何ももらえません。

そもそも大内義弘が勧請した時の姿はどんな具合だったのか、場所は勧請された当時のままなのか、何ひとつわかりません。どなたかが再建しない限りは朽ち果てていたと思われるので、再建物であることは確実です。

石段

六角堂・石段

長い長い石段。どんだけ登るんだーーと目眩がします。

観音堂

六角堂・観音堂

『寺院沿革史』によれば、中には行基作の如意輪観音像があるはずですが……。へばりついて覗き込むようなことはしませんでした。そもそも、現在もそうなのかは知りませんが、二十一年ごとのご開帳ならば、いつでも見れるものではないはずです。

石仏群

六角堂・石仏群

境内を一周しましたが、本当に何もありません。手水鉢であったらしきもの二つと、これらの石仏を見付けました。

六角堂(山口市秋穂東中条)の所在地・行き方について

所在地 & MAP 

所在地 〒754-1101 山口市秋穂東中条 1322

アクセス

残念ながら最寄り駅はありません。八十八箇所巡りの方々はどうやって回っておられるのだろうか、と考えてしまいました。素直にレンタカーを使うしかありません。しかし、地元の地理に詳しい方でないと、なかなか辿り着くのは難しいでしょう。偶然にも、超詳しいタクシーの運転手さんと出逢えたことは、まさに奇蹟でした。

普通に県内の友人と車で回っていても、目的地になかなか辿り着けないことは、かなりの高確率で起ります。レンタカー運転できるからどこでも行けるさ、とはならないのが辛いところです。着いてみると、なんだ、ここだったのか……というような場所に存在したりするのですが。その点、歩いたほうが見落とし難いです。ただし、距離が問題。バイクなどの身軽な乗り物が、あれこれ巡るには最適だと感じました。時間に余裕を持ってきちんと事前計画を立てることを強くおすすめします。タクシーをご依頼する際も、早めの予約であれば、行き先に詳しい方を派遣してくださる確立が高くなります。

一、地元の方でも知らない場所がある
二、タクシーの運転手さんだからといって、どの場所でも知っているわけではない

この二点は胸に刻み込んでおいてください。地元の方々は皆さんとても親切ですので、事前にお声かけしておけば、分らない場所でも探しておいてくださるかも。しかし、明日朝一で帰宅するので、今日中にすべて回ってください、と謎だらけの場所リストをいきなり突きつけられたら、たとえ専門家でも無理なことは無理です。

参考文献:『大内文化研究要覧』、『山口県寺院沿革史』、京都六角堂さま HP

六角堂(山口市秋穂東中条)について:まとめ & 感想

六角堂(山口市秋穂東中条)・まとめ

  1. 大内義弘が京都の六角堂を勧請した
  2. 本尊は如意輪観音
  3. 同じ秋穂にある、大昌寺の境外仏堂で、二十一年ごとのご開帳には、寺院にて盛大な供養が行なわれていた
  4. 現在はひっそりとして、やや寂しいが、立派な六角堂はなおも健在

六角形のフォルムがなかなかに面白い、立派なお堂です。義弘が勧請した時のままとは思えませんが、六角堂という名称ゆえ、何度再建しても、同じ形でしょう。ただし、現地まで行くのは骨です。大内文化の真髄云々とか、瑠璃光寺五重塔のようなものを想像している方は、むしろ来ないほうがよろしいかと。多分、往時の面影は何もないはずです。特に、歩くのが面倒な方(石段がたいへんです)、長時間車に乗るのが嫌な方にはオススメできません。

八十八箇所巡りとか御朱印集めとか、困難をものともせず、目的のために頑張れる方、そのようにすべてを集めて達成感が得られる方には面白い場所です。ですが、ここは現在八十八箇所に入っていないというご意見もお伺いしており、当方は感心がなかったので、その件については調べておりません。行ってみたら、何ひとつもらえない場所だった、というのでは困りますので、観光協会などに問い合わせをしてから向かってください。

あるいは、仏像に関心がある方でしたら、開帳(現在も二十一年毎かは知りません)に合せて見にいくのもありです。しかし、何の文化財指定も受けていないということは、『沿革史』に書かれている行基作云々は言い伝えだと思われます。六角堂が聖徳太子ゆかりのものであることから、琳聖の子孫を自称する大内氏がそれを勧請したという言い伝えを聞くだけで心が動きますけど、仮に義弘勧請当時の仏像が残っていたとしたら、それこそ指定文化財になっているはずです。恐らくはすでに朽ち果ててしまっていると思われます(見てないから知らないけど)。

そんな具合で、大内氏ゆかりの云々にこだわり過ぎると、再建物がある以外、何もない……となり、何ひとつ楽しめませんが、先に記したような冒険の心を忘れずにあれこれ楽しく回っている方々でしたら、十分楽しめると思います。六角形のお堂はとても珍しく、立派です。分りづらい場所にあることも、無事に到着できた時の達成感が半端ないです。御朱印そのたについてはよくわからないのですが、無人の寺社の場合、付近の寺社がかわりに取り扱っていたりします。こちらは、大昌寺さまの境外仏堂という扱いだったので、そこに行けば話が聞けそうです。しかし、普通そのような場合、御朱印そのたが必要な方は○○寺(神社)で扱っています、のような告知があるはずです。一周回りましたが、そのような案内はありませんでした。=もらえないとは限らないので、本当に、事前に問い合わせをしてください。

こんな方におすすめ

  • ちょっと珍しい史跡に行ってみたい方
  • 普通に秋穂の寺社仏閣を回っている方

オススメ度


(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)

畠山義豊イメージ画像
次郎

何、この「おすすめ」ヘンテコでわかんねぇ。ネタ切れ?

五郎不機嫌イメージ画像
五郎

だから、ない知恵を絞って必死で考えてるんだよ。それより、俺たちにかまうなよ。

畠山義豊イメージ画像
次郎

何言ってんの。俺の親父はお前のじーさんやその親父の代から味方同士なのよ。

五郎通常イメージ画像
五郎

ん? お祖父さまを知っているのか?

ミル不機嫌イメージ画像
ミル

素直な良い子を騙さないでください。於児丸の父上を死なせたり、流れ公方のせいで先代がヒドい目に遭ったり皆、あなたのせいでしょうが(素直だからって『ない知恵絞って』とか本当のこと言わないで欲しいなり)。

瑠璃光寺五重塔記念撮影
五郎とミルの防芸旅日記

大内氏を紹介するサイト「周防山口館」で一番の人気キャラ(本人談)五郎とその世話係・ミルが、山口市内と広島県の大内氏ゆかりの場所を回った旅日記集大成。要するに、それぞれの関連記事へのリンク集、つまりは目次ページです。

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  • この記事を書いた人
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ミル@周防山口館

大内氏を愛してやまないミルが、ゆかりの地と当主さまたちの魅力をお届けします

【取得資格】
全国通訳案内士、旅行業務取扱管理者
ともに観光庁が認定する国家試験で以下を証明
1.日本の文化、歴史について外国からのお客さまにご案内できる基礎知識と語学力
2.旅行業を営むのに必要な法律、約款、観光地理の知識や実務能力

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