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芦樵寺(防府市)

2020年10月8日

芦樵寺・参道

山口県防府市松崎町の芦樵寺とは?

観応元年(1350)、大内弘世が建立した寺院です。開山として、建長寺や円覚寺の住職をつとめた高僧・明岩大和尚という人を招きました。そうしたご縁により、長らく円覚寺の末寺となっていました。

大内氏の滅亡後は衰頽してしまいますが、常栄寺から来た南山和尚の尽力によって再興されます。それゆえ、南山和尚を中興とし、円覚寺派から東福寺派直末に改められました。

その後も、毛利氏の統治下のもとで、存続。明治時代に現在地に移転しました。維新の志士を支えた豪商、岡本三右衛門の頌徳碑があります。

芦樵寺・基本情報

住所 山口県防府市松崎町 5-27
山号・寺号・本尊 宝蔵山・芦樵寺
宗派 臨済宗東福寺派
坐禅体験 料金800円(要事前予約)
※料金は202003時点のものです。最新情報については、必ず事前にお問い合わせくださいませ。

芦樵寺・歴史

大内氏の先祖は周防国衙の在庁官人だった。国衙は現在の防府市あたりにあったから(だから地名が防府なのだ、多分)、実家が大内なら勤務地は防府。たいへんにゆかりが深い場所だ。しかし、この寺院が建てられたのは南北朝時代の観応元年(1350)、開基は大内弘世だから、もはやただの国衙の役人ではなく、中国地方の実力者になっていた頃のことになる。

弘世は明岩和尚という人を招いて開基とし、佐波郡西佐波令村字飛上り(『山口県寺院沿革史』の記述そのまま。現在の恵比須町とあるが、説明看板にある戎町と同じだろう)に寺院を建立し、菩提寺とした。明岩和尚は当時、円覚、建長寺両刹に歴住し名声徳望共に高い僧侶で勅諡大達禅師明岩大和尚と呼ばれる人だった(有名そうなのに『日本史広辞典』には一文字もない)。開山由来で、その後三百余年間、円覚寺の末寺だった。

大内氏ゆかりの寺院が滅亡後ふるわなくなる、の典型として、今にも衰頽しそうな状況となった。しかし、常栄寺(宮野)から南山和尚が住山し、復興に専念努力した結果、寺門は再興された。ゆえに、南山和尚をして中興とする。また、円覚寺派を改め、東福寺派直末 となった。

江戸時代、毛利家宿坊となったり、毛利重就が参詣・祈禱を行なうなど、新たな統治者の元でもしっかりとその役目を果たした。明治四年(1871)、旧藩毛利氏の改正布達によって、現在の地(元浄土宗正定寺跡)に移転した。正定寺は西念寺と合併していたから、それらすべての歴史がこの場所にある。現本堂その他の建造物は前記浄土宗正定寺当時のそのままを買收したものであり、二百余年前の建物という(参照:『山口県寺院沿革史』)。

車塚にあった時、火事によって宝物などが焼失したため、現存しない。
境内にはに勤王の士正五位岡本三右衛門の墓がある。

芦樵寺・みどころ

「維新の志士を支えた豪商、岡本三右衛門の頌徳碑」――山門前にある。
なお、当寺院では座禅体験ができる。
※座禅体験については、山口県、防府市などの自治体様サイトにて、最新情報を確認してください。

山門

芦樵寺・山門

本堂

芦樵寺・本堂

岡本三右衛門碑

芦樵寺「岡本三右衛門碑」岡本三右衛門は、幕末の志士たちを助けた商人。
彼に助けられた人の中には、高杉晋作氏や、坂本龍馬氏などの名前もある。

芦樵寺(防府市松崎町)の所在地・行き方について

所在地 & MAP 

所在地 山口県防府市松崎町 5-27

アクセス

防府駅からタクシーを使いました。公式アナウンスでは、「防府天満宮バス停下車5分」となっております。防府天満宮に参詣する前後に立ち寄ることができます。

参照文献:『山口県寺院沿革史』、説明看板

芦樵寺(防府市松崎町)について:まとめ & 感想

芦樵寺(防府市松崎町)・まとめ

  1. 観応元年(1350)、大内弘世が建立した寺院
  2. 開山として招聘した明岩和尚が、建長寺、円覚寺の住職をつとめた高僧だったことから、長らく円覚寺の末寺だった
  3. 大内氏の滅亡後に、寺院は衰頽の危機を迎えたが、常栄寺の南山和尚によって再興される。よって南山和尚を中興とする
  4. 毛利家宿坊となったり、毛利重就が参詣・祈禱するなど、毛利家にも尊重された
  5. 明治時代に、現在地に移転したが、この地はもともと浄土宗正定寺の跡地だった。正定寺は西念寺と合併していたことから、三つの寺院の歴史を受け継いでいる。なお、本堂その他の建物は、正定寺のものをそのまま用いたらしい
  6. 移転前に火災に遭い、宝物などはその際に焼失してしまったため、伝えられていない
  7. 山門前に、維新の志士を援助した豪商・岡本三右衛門の頌徳碑がある

防府天満宮を参詣した帰り道、偶然にも通りかかった寺院さまです。山門前に維新の志士を助けた岡本さんの石碑があるなど、一見普通に新しい神様に見えます。ゆえに、大内弘世が開基と知ってびっくりした次第です。むろん、寺地は移転しており、移転前に火災によってすべてを失っていることなどから、創建当時から伝えられるものはないと思われます。あれば、文化財指定を受けていてしかるべきですので。

建物が建て替えられ、寺地が移転しても、歴史はきちんと受け継がれています。特に建築物そのものにこだわりがないのであれば、大内氏ゆかりの寺院としてご参詣して問題ないと思われます。観光資源的な寺院さまではないのですが、座禅体験ができるということで(202003 現在)、禅宗に興味、関心を抱いたすべての方に門戸を開放してくださっておられます。

こんな方におすすめ

  • 維新の志士を援助した人に感銘する人
  • 座禅体験をして見たい人

オススメ度


(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)

五郎涙イメージ画像
五郎

座禅体験なんてしたくないよ。体験も何も、普通にやらされてるし。

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ミル

イマドキの方々と君の時代とは違うんだよね。現在はお寺に泊まって寺院の一日を体験するようなツアーをやっている寺院さまもあるよ。

五郎涙イメージ画像
五郎

寺って籠もって勉強させられるところじゃないか。イマドキの感覚だとホテルかなんかなの?

畠山義豊イメージ画像
次郎

寺って修行の場じゃん? そんなところに泊まって何が楽しいんだか。俺は真っ平ごめん。ここは座禅体験ってことだけど、益々嫌だぜ。

ミル笑顔イメージ画像
ミル

座禅がそもそも修行の体験版じゃないかな? あとは、精進料理フルコースとか。 お寺に入門させられて、みっちり絞られることがなくなった現代においては、日本文化を体験するまたとない機会みたいな感覚かと。関心ないから座禅体験すらやらんないけどね。

  • この記事を書いた人
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ミル@周防山口館

大内氏を愛してやまないミルが、ゆかりの地と当主さまたちの魅力をお届けします

【取得資格】
全国通訳案内士、旅行業務取扱管理者
ともに観光庁が認定する国家試験で以下を証明
1.日本の文化、歴史について外国からのお客さまにご案内できる基礎知識と語学力
2.旅行業を営むのに必要な法律、約款、観光地理の知識や実務能力

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