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護国寺(防府市本橋町)

2020年10月8日

護国寺・山門

山口県防府市の護国寺とは?

護国寺は防府市にある曹洞宗寺院です。江戸時代に火災によって古記録が失われたため、それ以前の由緒がはっきりしませんが、開基とされる方が正保四年(1647)にお亡くなりになっていることから、江戸時代よりは遡らないと考えられています。山口県の重要文化財となっている「護国寺の笠塔婆」が有名で、防府出身の俳人・種田山頭火ゆかりの寺院としても知られています。山門前には等身大の山頭火石像が、寺内にはたくさんの句碑があるほか、お墓も護国寺にあります。

護国寺・基本情報

住所 〒747-0041 防府市本橋町2-11
山号・寺号・本尊 摩尼山・護國寺
宗派 曹洞宗 

護国寺・歴史

案内看板がなかった(多分)ので、ご由緒はわからなかった。『山口県寺院沿革史』によればだいたいつぎのようなことが書かれていた(※『現代』というのはご本が書かれた昭和初期のことです)。

「寛政四年(1792)火災により、本堂庫裡が全焼して古記録等を焼失したため、寺記は全く不明。創建年代は不詳ながら、開基は伊勢国の人・善室存慶座元で正保四年(1647)四月八日に亡くなったというから、元和、慶長、寛永頃の創建だろう。 正保年間、一亭存臺和尚の中興で、雲巌寺第五世・永歓和尚を開山に招いてその末寺となった。(雲岩寺は今の極楽寺と注があるけれど、雲巌寺と雲岩寺どっちが正しいんだろう?)  

元文五年までは宝積寺と号したが第三世洞水密翁代、寛保二年(1742)に護国寺と改めた。『巡検上使(江戸時代に将軍代替わりごとに派遣された役人)の御火除場(防火用空き地のことらしいけど不明)に御引あてに仰付られし事ありといふ。』

寬政四年に焼失するまではすべての建物が完備されていたけれども、文政年間、玄海惠超和尚が本堂、 庫裡、観音堂、衆寮、本門等を再建した。じつに当寺院の中興と呼ぶべきであろう。それ以来、盛衰を続け、十九世。寺門は興隆し、現代となって寺門は益々振興しつつある。

寺宝 開山の傳衣一着、本尊延命地蔵尊、 一尺五寸、每年二回開扉。
本堂、庫裡、衆寮、本門、観音堂 (文政年間玄海惠超代の再建という)、位牌堂(明治二十年頃小学校校舍を移転改築したもの)。
宝物:雪舟筆 釈迦出山の絵像、曾我簫伯筆 達磨大師、勝海舟書一幅ほか数点」

護国寺・みどころ

種田山頭火墓所――墓、句碑、山頭火資料室
護国寺笠塔婆 県指定有形文化財

笠塔婆

護国寺「笠塔婆」説明図

そもそも、笠塔婆とは何ぞや? ということがわからない。石塔にも色々な種類があって、それぞれの部品(?)にも名称がある。せっかく大量の石塔類を見てきたので、これらについてはどこかにまとめたいけど、まず、「笠塔婆」についてだけ見ると、上図のようにいたってシンプル。

このような石塔というのは、たいてい誰かを供養するためだったりに立てられており、こちらにもきちんと供養者と供養される人のお名前が塔身に刻まれていて、「貞永元年(1232)、刑部氏が中子の供養のために」建立した、ということがわかっている(刑部氏というのは周防国目代だった阿部丞忠康)。

塔身に刻まれている梵字だけれど、説明看板のものをお借りしてそのまま載せておくと、つぎのようになっている。
(※そのままだと見にくいため、梵字部分だけを拡大させていただいています)

正面の種子。阿弥陀三尊。

護国寺・笠塔婆説明看板(梵字部分)

背後。

護国寺・笠塔婆説明看板(梵字部分)

さらに、側面には「空(ケン)風(カン)火(ラン)水(バン)木(ア)」の五輪塔が刻まれている。

このように、古い時代の石塔がそのままのかたちで残っていることはじつは珍しく、宝珠が取れてしまっていたりとか、不完全であることが多い。その意味で、たいへんに貴重なものなのである。しかもこれ、かなり立派なものであるらしい。県内では数少ないものとして、指定文化財となっている。(参照:説明看板)

畠山義豊イメージ画像
次郎

こうやって残っていると、数百年後の人たちに、供養者や供養されている人の名前がつたわるわけね。俺の供養塔もどこかにないのかな……。

於児丸不機嫌イメージ画像
於児丸

由緒ある名門の血筋なら、墓くらい残るはずだが。お前は「正統」ではないゆえ、我らの墓地には入れない。

畠山義豊イメージ画像
次郎

何なのよ。調べもせずに。於児丸の父親の墓は正覚寺にあるけど、本人のはさて、どこにあるのやらね。

種田山頭火像

護国寺・種田山頭火等親石像

種田山頭火

明治十五年(1882)1203-昭和十五年(1940)1011。大正昭和前期の俳人。本名正一。
山口県出身早大中退。大正二年(1913)萩原井泉水に師事し、自由律の俳句誌「層雲」で活躍した。種田家破産ののち、大正十四年(1925)熊本市の曹洞宗法恩寺で出家得度、耕畝と改名。以来「行乞放浪」の旅に出て、多くの句作を残した。自選句集「草木塔」 (参照:『日本史広辞典』)

種田山頭火さんは防府市八王子の生まれ。なので、元々ファンが多い方だけれども、防府の方々にはことに慕われている。市内には「山頭火ふるさと館」などもある。防府市に限らず、ゆかりの場所に句碑が造られていることが多いが、この寺院内には特にたくさんの山頭火句碑がある。そして、この寺門にはこんなに活き活きとしたお姿の像が建立されているのである。

『草木塔』

護国寺・『草木塔』

山門の向かって右手、つまり山頭火さんの石造と向かい合うようにして「草木供養塔」が立っている。この写真だと見にくいのだが、お地蔵さまが立っておられる下の部分に文字が三行書かれている。内容は、後ろに貼られた寺院さまの説明看板に詳しい。

草木供養塔というのは、我々人間が生きていくためには草や木を採って生活しなくてはならないから、草木への感謝の気持ちを忘れてはいけない、という思いを込めて作られるものであるようだ。つまりこの石塔の中央には「草木供養塔」と書いてあり、その右には「草木塔」(この写真から見えている文字です)と書いてあって、左側は山頭火の句碑となっている。でもって、「草木塔」というのは、種田山頭火の句集のタイトル。

つまりこの塔は山頭火さんの句集『草木塔』の名前を刻み、さらに、句碑ともなっている「草木供養塔」なのである。このことに気付けば、もっと丁寧にお参りできたのだが、山頭火さんの石像に圧倒されて反対側にはまったく気付かなかった次第。

種田山頭火の墓

護国寺・種田山頭火の墓

各地を旅しながら句作を続けた山頭火さんは、山口に滞在したこともあったけれど、最後は愛媛県松山市の「一草庵」というところで、59歳で亡くなった。そのお墓が生まれ故郷の防府市にある。この寺院さまにある由縁がわからなかったけれど、これだけたくさんの句碑があることからしても、なんらかのゆかりがあるのだと思う。

子育て地蔵尊

護国寺・子育地蔵尊

幼児を抱いて慈母の姿をした「安産と育児」の地蔵尊、と書いてあった。

護国寺(山口県防府市)の所在地・行き方について

所在地 & MAP

所在地 〒747-0041 防府市本橋町2-11

アクセス

防府駅からタクシーを使いました。「駅から車で5分」というご案内なので、最寄りのバス停などはないのかもしれません。観光タクシー的に防府市内一日観光のように回っていたため、現時点では詳細な行き方をお伝えできません。防府駅から十分歩けそうに思えますが、超高層ビルと違って遙か彼方から見えるわけではないため、ナビゲーションをお使いになるのがいいかと存じます。

参照文献:『山口県寺院沿革史』、文化財案内看板、寺院さま案内看板、『日本史広事典』種田山頭火項目

護国寺(山口県防府市)について:まとめ & 感想

護国寺(山口県防府市)・まとめ

  1. 山口県防府市にある曹洞宗寺院
  2. 鎌倉時代の笠塔婆がほぼ完全に近いかたちで残されており、たいへんに貴重な文化遺産となっている
  3. 俳人・種田山頭火ゆかりの寺院で、墓がある

防府市は観光タクシー貸切りのようなかたちで訪問したのですが、行き先は観光客が自由に指定できるありがたい企画だったゆえ、つまりは行きたい場所として指定したはずです。しかし、どうこじつけても江戸時代建立の寺院が大内氏ゆかりの寺院であるはずはないです。ただ、これらの理解はすべて『山口県寺院沿革史』から来ているので、寺院さまにお問い合わせすればより詳しいご由緒がわかるはずです。あるいは前身となった寺院さまというものが存在し、そこで何らかのかかわりがあった可能性も捨てきれません。そもそも行き先に指定した時点で、どこかで何かのゆかりを見かけたからであるはずです(記憶の彼方です)。

笠塔婆などきいたこともなく、種田山頭火さんもお名前しか存じ上げないくらいなのに、何かの間違いで迷い込んでしまいました。けれども、入り口の山頭火さん像を見た瞬間に来て良かった、と思ってしまいました(そのくらい、インパクトあります)。結果的にとても長閑で心地良い寺院さまに偶然にもお参りできた、という貴重な体験となりました。

肝心の寺院さまと山頭火さんの関係がよくわかりませんが、相当強い結びつきがなければ、ここにお墓があるはずはないでしょう。現地ではまったく気付きませんでしたが、資料館なども併設しているようなので、勇気を出して寺院さまにお声かけしてみるべきでした。

こんな方におすすめ

  • 種田山頭火さんを崇敬している方(ご訪問しない理由が見当たりません)
  • 石造物(?)に関心がある方(要するに笠塔婆です)

オススメ度


(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)

五郎吹き出し用イメージ画像(怒る)
五郎

で? この寺院と俺たちの関係って何?

畠山義豊イメージ画像
次郎

そんなんどーでもいいじゃないの。俺も入り口のおじさん、気に入った。

於児丸不機嫌イメージ画像
於児丸

「おじさん」ではなく、「種田山頭火」さんだ。有名な方だから、名前くらいは覚えろ。

五郎イメージ画像(背景あり)
五郎とミルの部屋

大内氏を紹介するサイト「周防山口館」で一番の人気キャラ(本人談)五郎とその世話係・ミルが、山口市内と広島県の大内氏ゆかりの場所を回った旅日記集大成。要するに、それぞれの関連記事へのリンク集、つまりは目次ページです。

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ミル@周防山口館

大内氏を愛してやまないミルが、ゆかりの地と当主さまたちの魅力をお届けします
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