みやじま・えりゅしおん

鷹巣浦神社(広島県廿日市宮島町)

鷹巣浦神社

厳島神社の摂社・末社はどれも魅力的ですが、「御島巡り」のコースに入っている海の神社は宮島ならではです。海上からしか参拝できないことも、条件が合わなければ訪問できない分、ますます何としても赴きたいという思いにかられます。でも、それらの神社の中にも、桟橋から徒歩で向かえる場所はございます。

今回は、桟橋から徒歩で行くことができる浦々の神社・鷹巣浦神社をご案内いたします。歩いて行くにはかなり時間がかかりますが、その分、無事にご参詣できたときの達成感は半端ないです(訪問回数2回)。

広島県廿日市宮島町の鷹巣浦神社とは

厳島神社の末社で、浦々の神社のひとつです。「七浦」にも数えられており、「御島巡り」では三番目に参詣する神社であり、「第二拝所」となっています。三番目にご参詣するのに、「第二」拝所となっている理由は、二番目に参詣する包ヶ浦神社が、七浦にも入っていないばかりか、「拝所」としても数えないからです。なぜ、包ヶ浦神社を「拝所」とお呼びしないのかは不明です。

「御島巡り」では海上からの参拝となりますが、桟橋から歩いて行くこともできます。

江戸時代に台場が設けられたり、明治時代には砲台が設置されたりしました。特に、明治時代の砲台設置にあたっては、社殿の位置が遷されたそうです。

鷹巣浦神社・基本情報

ご鎮座地 廿日市市宮島町
御祭神 底筒男命
主な建物 社殿、鳥居
(参照:『宮島本』、建物は目視、ご鎮座地は Googlemap)

鷹巣浦神社・歴史と概観

「御島巡り」の「第二拝所」

御島巡りの第二拝所となりますが、参詣する順番は杉之浦神社、包ヶ浦神社に次いで三番目となります。海上から参拝する神社となりますが、桟橋から陸路来ることもできます。海上から参拝する神社には、岩の上にご鎮座しているところが多いのですが、こちらは砂浜に建てられています。

海からも陸からも参詣できる神社として、とても有難い存在です。

御祭神・底筒男命

お祀りされている神さまは、底筒男命さまです。山白浜神社のところに『古事記』の引用文を載せましたが、その注釈によりますと、底津綿津見神、中津綿津見神、上津綿津見神三柱は「阿曇連等」の「祖神」。底箇之男命、中箇之男命、上箇之男命三柱の神は、「墨江」の大神ということです。なんのこっちゃいと思いますが、綿津見神は「阿曇」という氏族の祖先神、〇筒之男命は「墨江」=住吉神社の御祭神という意味です。「筒」は「つつ」と読みますが、上の「つ」は助詞、下の「つ」は「津=港」だそうです。「住吉は古く『すみのえ』と言い「墨江」はその表記」と解説されておりました。(参照:中村 啓信. 新版 古事記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫) (p.59). 角川学芸出版. Kindle 版)

いずれ、下関の住吉神社も含めて調査したいです。いずれにしても、底筒男命(=底箇之男命、そこつつのおのみこと)は海の神さまです。

台場や砲台

『宮島本』によれば、かつて鷹巣浦神社があった場所は、現在地ではありません。明治31(1898)年、神社のご鎮座地であった場所に砲台を作るために、社殿が遷されてしまったのです。神さまのお住まいを動かしてまで、砲台を作ったというのですから、驚きです。砲台跡は今も残っておりますので、そこが、元のご鎮座地であったと推定できます。

また、ご鎮座地付近(入浜)には、台場が造られていたといいます。台場って、東京にもありますが、「黒船に備えて」(参照:『宮島本』)と書いてありますから、同じ用途のものですね。そんなものを造ったところで、備えにはならなかったと思われますが、当時の思想はそうだったのでしょう。遅れていましたからね。しかし、その後、近代化が進んだ後も、この地に砲台が造られたって……。何気に Googlemap を拝見したら、宮島と向かい合う島にも○○砲台と書いてあるではありませんか。当時の人々は、敵の船がこんなところを通過すると真面目に考えておられたんですね。備えあれば憂いなしですが、こんなところまで入り込まれたら、それこそ大変です。

宮島に謎の防衛施設があったことを知り、他所者観光客はびっくりですが、砲台跡は鷹巣浦だけではないのですよ。今となっては無用のものであり、それが使われるような事態にはならなかったのは幸いでした。鷹巣砲台跡については場を改めます。

鷹巣浦神社・みどころ

包ヶ浦からずっと、包ヶ浦自然歩道から見える得も言われぬ美しい景色が続きます。最高の散策コースです。その先に鷹巣浦神社がご鎮座されていますから、ご参詣するにはこの素晴らしい風景を満喫しながらの心洗われるひとときとなります。

鷹巣浦神社への道

鷹巣浦神社・付近の光景

最も美しい光景は、写真を撮るのも忘れるほどです。気付けば、木に遮られたものばかりしかありませんでした。

分岐点看板

鷹巣浦神社・順路看板

砂浜に降りていくと、分岐点を示す看板がありました。どうやら通り過ぎてしまったようです。「入浜」とあるのは、かつて広島藩の「台場」があったところですね。今も何かの遺構があるのかどうかは、立ち寄らなかったため不明です。

社殿

浦々の神社・鷹巣浦神社

立派な鳥居の背後に、どっしりとしたご本殿がご鎮座ましましておりました。砂浜の上に建っておられますから、しっかりした台座の石垣があります。

海からのご参詣

浦々の神社・鷹巣浦神社(遠景)こちらは、二回目のご参詣で、海から上陸した時に撮影したもの(202306)。陸路来ていると、桟橋からここまで相当歩いていますので、すでにヘトヘト。参拝終わったら即つぎへって感じで、慌てふためいています。神社は海に向かって鎮座しているので、海上から訪問するのがごく自然です。歩いて来ると最初に視界に入るのは社殿の裏側。参拝のために、ぐるっと回ってあとは大急ぎで立ち去るという、じつに奇妙かつ無礼なことになります。

海からですと、正面からお姿を拝みながら少しずつ近付いて行き、地面に生える草(海藻?)を眺める心の余裕もありました。

鷹巣浦の海

鷹巣浦神社・付近2

歩き疲れてヘトヘトになっても、この麗しい海を見ていたら、心が癒やされて次に進む力が湧いてきました。本当に長閑で、時が経つのを忘れてしまうのです。嫌なこともすべて吹っ飛びました。

鷹巣浦神社(廿日市宮島町)の所在地・行き方について

ご鎮座地 & MAP 

ご鎮座地 廿日市市宮島町
(※Googlemap にあった住所です)

アクセス

桟橋より、厳島神社とは反対方向に向かいます。右手に見える車道を道なりに行きますと、杉之浦神社、包ヶ浦自然公園と続きます。その後、包ヶ浦自然歩道を歩きながら、白砂青松の海を眺めつつ進んで行きます。言葉にするといともたやすいのですが、これだけ歩くのはかなりの運動量となり、時間もかかります。半日は費やす覚悟で向かってください。

参照文献:『宮島本』、『古事記』(現代語訳)

鷹巣浦神社(廿日市宮島町)について:まとめ & 感想

鷹巣浦神社(廿日市宮島町)・まとめ

  1. 厳島神社の末社で、浦々の神社のひとつ。
  2. 「御島巡り」では三番目に訪れる神社で、「第二拝所」。海上からの参拝となる
  3. 桟橋から歩いて来ることができるため、参詣するのは困難ではない。しかし、桟橋からはかなり歩くことになるため、覚悟は必要。そのかわり、包ヶ浦より先は、宮島一素晴らしい散策路と言っても過言ではない(個人的見解)「包ヶ浦自然歩道」が続いており、眼下に白砂青松の海を見ることができる
  4. 鷹巣浦神社は、明治時代に砲台を建設した際、ご鎮座地を遷されている。また、付近の入浜には、幕末期に広島藩が造った台場もあったという(参照:『宮島本』)
  5. 御祭神は住吉三神の底筒男命という、いかにも海の神さまをお祀りする神社
  6. 砂浜に鎮座しているので、しっかりとした石垣の台座の上に建てられており、社殿も重厚感がある

陸からと海から、二回参拝しています。陸から行く場合ですが、遠い上に、ややわかりにくいです。わかりにくいと言っても、見つけられないレベルではありません。杉之浦神社のように道なりに鎮座しているわけではないので、どこかで砂浜に降りていく必要があり、そこでちょっと道を誤りました(通り過ぎてしまいました)。

宮島の案内看板は日々進化しておりますので、次回はわかりやすい看板ができているかもしれません。本当に懇切丁寧なのです。こちらの神社は、桟橋から遠いことが災いして、さすがにここまで足を伸ばす人はそう多くないようです。それゆえに、看板設置が後回しになる可能性はゼロではないですが。

どこの神社も同じようなご本殿なので、一時にあまりにたくさんご参詣すると、ちょっと飽きて来ます。でも、同じに見えて、それぞれが個性的ですので、その違いを探すのもまた、楽しいです。この先、砂浜に鎮座している神社さまが続きます。もうお腹いっぱいの方はここで一旦お休みしてもよいかと思います。

陸からと海から、二回の訪問で、それぞれ違った魅力に触れることができました。御島巡りで海上からの参拝になるということは、やはり、海から向かうのが正統なのかな、と感じました。陸からですと、背後から入っていく形になりますので。きちんと正面からお参りすれば問題はないのですが。陸路から向かって、見落としかけたのは、やはり、神社さまが海に向かって開けておいでだからかと思いました。確かに、桟橋から歩いて行くのは遠すぎます。そのような人を想定してはおられぬのかもしれません。

こんな方におすすめ

  • 浦々の神社を極めたい方(歩いても行けます)
  • 厳島神社の摂社・末社を極めたい方

オススメ度


(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)

五郎セーラー服吹き出し用イメージ画像
五郎

陸からでも、海からでもどっちからも行けるということは、どちらから行っても問題ない、ってことじゃないの? 俺たち、両方から行ってるから全く問題なし。ボートがない人は、陸から行くしかないよね。

鶴千代吹き出し用イメージ画像(仕官)
鶴千代

また、船を求めて彷徨ったのか?

五郎セーラー服吹き出し用イメージ画像
五郎

お前もしつこいね。船がなかったら海上からの参拝が叶うはずないだろ? 残念ながら、船はきちんと手配できました。

ミル吹き出し用イメージ画像(涙)
ミル

手配するお金なんて、あるはずがない。すべては廿日市の先生のお陰だよ。

鶴千代吹き出し用イメージ画像(仕官)
鶴千代

やはり、元就公を敬愛する安芸国の方々は、心優しいのだな。しかし、お前たちの身分を知れば、普通は貸してくれないはずだが。特に、お前。

五郎セーラー服吹き出し用イメージ画像
五郎

(何なんだよ。相変わらず意味不明……)

腰少浦神社付近での記念写真
みやじま・えりゅしおん

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ミルイメージ画像(アイコン用)

ミル@周防山口館

廿日市と東広島が大好きなミルが、広島県の魅力をお届けします

【取得資格】
全国通訳案内士、旅行業務取扱管理者
ともに観光庁が認定する国家試験で以下を証明
1.日本の文化、歴史について外国からのお客さまにご案内できる基礎知識と語学力
2.旅行業を営むのに必要な法律、約款、観光地理の知識や実務能力
【宮島渡海歴三十回越え】
厳島神社が崇敬神社です
【山口県某郷土史会会員】
大内氏歴代当主さまとゆかりの地をご紹介するサイトを運営しています

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