みやじま・えりゅしおん

 厳島神社五重塔(広島県廿日市市宮島町)

2025-01-26

五重塔・案内看板

今回は、厳島神社と並んで宮島を代表する建築物のひとつである、五重塔についてご紹介します。五重塔という仏教系建築物でありながら、厳島神社の管轄下にございます。その建築構造にも、ほかの五重塔とは異なるところがあるなど、なかなかに興味深い上、とにかく麗しいお姿です! (訪問回数30回以上)

広島県廿日市市宮島町の厳島神社五重塔とは?

宮島にある五重塔です。厳島神社によって管理されています。五重塔が建っている岡を、「塔の岡」と呼び、かつて大願寺もこの付近にあり、五重塔や多宝塔とともに、「厳島伽藍」と呼ばれていました。神仏分離で仏教系の仏像などを大願寺に移転。神社の管轄下となることで、廃仏毀釈の嵐を無事にやり過ごしたと囁かれています。高台にある背の高い建物であることから、島内のあらゆるところから(山奥などは除く)見ることができ、いくつもの写真撮影に最適な場所があります。なお、「塔の岡」は、厳島合戦の関連史跡でもあります。

心柱が最上部まで達していないという珍しい造りとなっており、朱色に塗られた姿も鮮やかです。ただし、彩色が施されたのは現代になってから。塔そのものの創建は、応永年間といわれています。

厳島神社五重塔・基本情報

所在地 〒739-0588 廿日市市宮島町1−1 
塔の岡にあります。
元は仏塔として、本尊:釈迦如来、脇士:普賢文殊菩薩が安置されていた。神仏分離後に仏像は大願寺に移され、厳島神社管轄の建築物となった
(参照:『宮島本』、住所は Googlemap)

厳島神社五重塔地図

厳島神社五重塔の位置はご覧の通りです(緑枠内)。厳島神社からほど近い場所にございます。また、高台にある大きな建物ですので、見落としはないと思われます(※五重塔登り口にある案内版をお借りしております)

厳島神社五重塔・歴史と概観

そもそも五重塔とは?

日本における様々な「塔」の起源は、仏教とともに「渡来」したことによるもので、最初は「朝鮮式」ついで「中国式」「インド式」などの建築様式を真似て建てられていたようです。やがて鎌倉時代頃までには、日本独自の建築様式による塔が建てられるようになりました。

五重塔は「多層塔」に分類されます。五重塔から十三重塔まであります。最古の五重塔は法隆寺のものですが、ほかにも多数の有名な五重塔が全国各地にあります。

建築構造の詳細をお伝えすることは、とても難しいのですが、ごくごく簡単にご説明すると一般的に以下のような感じです。

礎石(地下)―心柱―基壇―基壇上の礎石

基壇上の礎石に柱を建てて、梁や桁で結合しつつ各階層を積んでいきます。中心となる心柱は五層目まで貫かれており、相輪をいただいています。

なお、一般に塔といえば、仏舎利を納めた建物という認識ですが、仏舎利は礎石にあけられた丸穴に容器に入れて収められています(舎利容器)。そして、一層目に須弥壇があり、東西南北それぞれは、「維摩詰像土」「分舎利仏土」「弥勒仏像土」「涅槃像土」と呼び塑像を安置します。

一応の基本形は以上の通りで、ほかにも屋根だのそれぞれの建築パーツだのに名称があり、極めて複雑です。まあ、普通に観光するのにそこまでの知識は必要ないのかな、と思います。

じつは、厳島神社五重塔は、ほかとは異なる特別な構造をしておりまして、比較のためにもと五重塔の基本についてご紹介しました。

厳島神社五重塔の特徴

厳島神社五重塔は、応永十四年 (1407)に創建されたといわれます。天文二年(1533)にも修理が行なわれているので、創建も修繕も大内氏全盛期時代の頃の建物と言えます。

桧皮葺きの三間五重塔婆であり、 和洋と禅宗様の折衷で、細かな装飾が特徴です。朱塗りの堂々たるお姿が宮島のシンボルとなっていますが、意外にもこれは、昭和時代の修理にあたって塗装されたのだといいます(参照:『宮島本』)。

外側からは見ることができない部分とはなりますが、塔内には蓮池図、白衣観音図、瀟湘八景、真言八祖像などの壁画が描かれているほか、一層柱に寄進者のお名前が記されています。

この五重塔の最大の特徴は、中心の柱が二層までしか到達していない、ということです。瑠璃光寺の五重塔は、下から上まで一本の柱が貫いているのだと教わり圧倒されましたが、こちらは二層どまりです。そもそも、一般に五重塔は柱が最上層まであるのが普通です(上述)。これだけ高い建物を支えなければならないのですから、当然と言えます。しかし、宮島の五重塔はそれが二層までしかないというのですから、いったい、どうやって支えているのだろうと心配になりますね。実際、三層以上は押すと揺れてしまうそうです。

このようになっていることには、もちろん理由があって、柳に風と受け流すことで、却って自然災害などの強い力がかかったときに、倒壊することを防いでいるのです。

五重塔は本尊として、釈迦如来が、脇士に普賢文殊菩薩がお祀りされている仏塔でした。けれども、明治維新となってこれらの仏像は大願寺に引き取られ、五重塔は厳島神社に帰属しました。廃仏毀釈の時代、神社の所有物であると主張することで、貴重な五重塔が守られたのです。⇒ 関連記事:厳島神社大願寺

なお五重塔が建っている岡は「塔の岡」と呼ばれており、厳島合戦史跡の一つとなっています。詳しくは「塔の岡」をご覧ください。⇒ 関連記事:塔の岡

宮島中にある五重塔の撮影スポット

五重塔は見るべきものがいっぱいの宮島の中でも、厳島神社や多宝塔と並んで美しい建物の代表格です。ことに、高台にあること、五重塔ゆえ、塔じたいに高さがあることから、島内の至る所からそのお姿を拝めます。むしろ、真下まで行くと、大きすぎて画面に収まり切らないゆえ、遠くから仰ぎ見るほうがよかったりします。どこから見ても美しく、ココが最高! という場所はないのですが、写真撮影にオススメの場所は何カ所かございます。

それぞれ、その撮影場所がある観光資源のところでもご説明していますが、ここにそれらをまとめておきます。なお、撮影場所への行き方などは、それぞれのリンク先をご覧くださいませ。

山辺の古径からの展望「五重塔」

山辺の古径から見た五重塔

町家通りから見た五重塔

町家通りから見た五重塔

厳島神社五重塔・みどころ

とにかく美しいです。日本一美しい五重塔と言っても過言ではありません。ただし、どちらかというと、厳島という麗しい島の中にあってこその美しさなので、間近に仰ぎ見るよりも、遠くから見たお姿のほうが趣があります。もちろん、いずれのお姿についても満喫していただきたいと切に願います。なお、ライトアップされた幻想的なお姿も最高です。島内に宿泊されている方はぜひご覧ください。

五重塔(全体像)

厳島神社五重塔

塔の岡に上がって、真下から仰ぎ見たお姿です。全体像を納めるには、かなり遠くまで下がる必要がございます。意外に写真撮影が難しいことになります。最近になって、漸く気付いたのですが、そんなときはスマートフォンのズーム機能を使えば問題解決です。ズームって、大きくするだけと思っていましたが、小さくする(0.5倍など)こともできるわけで、これを使えば間近にいても全体像を写せます。

遠景

塔の岡・厳島神社五重塔

遠景というほどでもないですが、塔の岡に上っていく階段の中途付近から撮影しました。となりに千畳閣も入り、構図としてはまずまずです。ただし、階段の途中での撮影は足元に要注意となります。階段には手摺りがついておりますが、写真撮影中は手を放すことになります。万が一にも足を踏み外したらたいへんなことになりますので、くれぐれもお気を付けください。

ライトアップ

五重塔ライトアップ

あまりの美しさに感動するあまり、手が震えてブレてしまいました。五重塔は遠くから見たお姿が美しいこと、夜間は足元が危ないため階段を上がってはいかないほうがいいことなどから、遠方からの撮影をおすすめします。

厳島神社五重塔(廿日市市宮島町)の所在地・行き方について

所在地 & MAP 

所在地 〒739-0588 廿日市市宮島町1−1
(※Googlemap にあった住所です)

アクセス

冒頭の案内看板をご覧いただければ分かる通り、五重塔がある塔の岡に上がる道は何本かあります。幸い五重塔のお姿は宮島中から見えるといっても過言ではないため、厳島神社観光のために来島した方ならば、どなたでも辿り着けます。要はお姿が見える方向に歩いて行けばいいだけです。

参照文献:『図説歴史散歩事典』、『宮島本』、現地案内看板

厳島神社五重塔(廿日市市宮島町)について:まとめ & 感想

厳島神社五重塔(廿日市市宮島町)・まとめ

  1. 創建は応永年間といい、その後、天文年間に修理された記録も残る。宮島のシンボルとも言える建造物のひとつで、五重塔が建っている場所は「塔の岡」と呼ばれている
  2. 元は多宝塔などとともに「厳島伽藍」を形成していた仏教系建築物のひとつ。神仏分離により、内部に安置されていた仏像を大巌寺に移し、厳島神社の管轄に入ることで、解体などの恐れを避けた
  3. 現在も厳島神社管轄の建物のひとつ
  4. 五重塔は元来、一本の心柱が最上階まで貫いているのが普通だが、宮島の五重塔は二層目までしか柱が通っていない。不安定になりそうに思え、実際三層以上は押すと揺れてしまうという。このような特殊な建築様式となっているのには理由があり、自然災害などの際、柳に風と受け流すことで、却って被害を最小限に留めることができるらしい
  5. 厳島神社ゆかりの摂社・末社などには、朱色が使われていることが多い。こちらの五重塔もその鮮やかな朱色が麗しい。しかし、意外にも朱色に塗られたのは最近のことで、昭和期の修理により施されたもの
  6. 元々背の高い建物である上、高台に建っていることから、遠くからでもその姿を拝むことができる。そのため、写真撮影にもってこいの場所がいくつも存在し、夜間にはライトアップされた姿も楽しめる。
  7. 残念なことに、2025現在、修理に入っており、しばらくその姿を拝むことができない

厳島神社は別格として、五重塔ほど美しい建物はほかにないです。大鳥居と五重塔はまさに宮島のシンボルだと思っています。その五重塔が、しばらく修理期間に入るとか。大鳥居の修理に何年かかったか忘れてしまったほどですので、こちらもかなり先まで、お目にかかれそうにありません。先んじて修理に入った多宝塔も含め、とにかく宮島は常にどこかしら修理中でして、すべてが完全に揃った状態に遭遇したことが、今のところないです。

通い始めてまだ五年目なので、長い歴史の中で考えれば稀有なことなのでしょうけれども。厳島神社のほうは、大鳥居はとにかくとして、修理中ならではの光景もあれこれと拝むことができました。ですが、多宝塔や五重塔はすっぽり覆われてしまい(大鳥居もそうでした)、修理が完了するまではないも同然です。

フェリーから見える大鳥居と五重塔が、近付くにつれて大きくなっていく時のドキドキワクワク感がしばらく味わえないと思うと悲しすぎます。この機会に普段は足を伸ばせないようなところまで行くかなぁと思ったりしておりますが、やはり何かが足りない感は半端ないことになると想像します。しかも、このような文化財の修繕には数年かかりますから……。それまでどうしたら。

もしも、特に宮島に行くことを急いでいない方がいらしたら、五重塔の修理が終わるまでは避けたほうが無難です。厳島神社も未だにどこかしら修理していますし、多宝塔も修理中。見るべき物がない完全に揃っていない状態で赴くのは、非常にもったいない気がします。ことに、日本全国のみどころを回るかたちの旅を楽しんでおいでの方は、事前に観光協会などに問い合わせをして、日程の調整をしたほうがよいです。何度も同じ場所を訪れる方はよろしいのですが、毎年新たな場所にという方にとっては、今は宮島に行くべき時期ではないと感じます。行ったけど、あそこもここも修理中で……となりますから。

こんな方におすすめ

  • 五重塔そのほか「塔」が好きな方
  • 厳島神社以外にも、宮島を代表する建物に行ってみたいと考えている方

オススメ度


(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)

五郎吹き出し用イメージ画像(涙)
五郎

そんな……。今年は塔の岡に行っても楽しめないね。

ミル吹き出し用イメージ画像(涙)
ミル

多宝塔も五重塔も「ない」なんて……。

五郎吹き出し用イメージ画像(涙)
五郎

神社の修理だって、どうせ終わってないのでは?

鶴千代吹き出し用イメージ画像(仕官)
鶴千代

元就公ゆかりの島である事実は消えない。ちから餅を食って楽しむのだ!

ミル吹き出し用イメージ画像(笑顔)
ミル

ああ、それがありました。

五郎吹き出し用イメージ画像
五郎

へへへ。

※この記事は2025126「厳島神社○○となっている建築物」から、五重塔に関わる部分を独立させ、加筆修正したものとなります。

腰少浦神社付近での記念写真
みやじま・えりゅしおん

宮島旅日記のまとめページ(目次)です。厳島神社とロープーウエーで弥山頂上は当たり前。けっしてそれだけではない、宮島の魅力をご紹介。海からしか行けない場所以外は、とにかく隅々歩き回りました。宮島の魅力は尽きることなく、旅はなおも続きます。

続きを見る

厳島神社御文庫と五重塔
「厳島神社○○」となっている建築物

五重塔も多宝塔も、じつは「厳島神社五重塔」だった?「厳島神社○○」となっている建築物まとめ

続きを見る

  • この記事を書いた人
ミルイメージ画像(アイコン用)

ミル@周防山口館

廿日市と東広島が大好きなミルが、広島県の魅力をお届けします

【取得資格】
全国通訳案内士、旅行業務取扱管理者
ともに観光庁が認定する国家試験で以下を証明
1.日本の文化、歴史について外国からのお客さまにご案内できる基礎知識と語学力
2.旅行業を営むのに必要な法律、約款、観光地理の知識や実務能力
【宮島渡海歴三十回越え】
厳島神社が崇敬神社です
【山口県某郷土史会会員】
大内氏歴代当主さまとゆかりの地をご紹介するサイトを運営しています

-みやじま・えりゅしおん