今回は、浦々の神社のひとつ、腰少浦神社についてご案内します。『宮島本』の浦々の神社についての解説文が、最も少ない神社さまなので、みどころがないの? と思ってしまいますが、そんなことは一切ございません。桟橋から歩いて行くことも可能です。この記事が、何かのお役に立てたならば幸いです。(訪問回数3回)
広島県廿日市市宮島町の腰少浦神社とは?
厳島神社の末社で、浦々の神社のひとつです。「御島巡り」で四番目に訪れる神社であり、「第三拝所」にあたります。「御島巡り」では、海上からの参拝となりますが、桟橋から歩いて行くこともできるため、陸からの参拝も可能です。ただし、桟橋から徒歩で行く場合には、かなりの時間がかかることには、注意が必要となります。
御祭神は中津少童命で、典型的な海の神社です。特筆すべき点はありませんが、厳島神社の摂社・末社を極めたい方や神社巡りがお好みの方には外せない訪問先となります。
腰少浦神社・基本情報
ご鎮座地 廿日市市宮島町
御祭神 中津少童命
主な建物 鳥居、社殿
(参照:『宮島本』、建物は目視、ご鎮座地は Googlemap)
腰少浦神社・歴史と概観
中津少童命お祀りする「海神社」
浦々の神社の御祭神は、養父崎神社の神鴉さまを除き、すべてが海に関わる神さま方です。宮島が島であり海の上に浮かんでいるという地理的事情、本社である厳島神社に海上安全などのご利益があることなどからも、海の神さま方がお祀りされている理由は頷けます。
浦々の神社は、厳島神社の摂社・末社の中でも、とりわけ海との関係が深く、海上からしか参拝できない神社が多いなど、すべてが海を望む場所にご鎮座しておられます。すべての神社にご参詣すれば、『古事記』『日本書紀』に出てくる海の神さま方へのお参りが一時に済んでしまいます。
中津少童命は、伊弉諾命が「禊」を行なった際に生まれ出た海の神さまの一柱です。『日本書記』によれば、底津少童命 ⇒ 底筒男命 ⇒ 中津少童命 ⇒ 中筒男命 ⇒ 表津少童命 ⇒ 表筒男命の順にお生まれになりました。これらの神々はすべて、宮島の浦々の神社に、それぞれ御祭神としてお祀りされているのです。
すべての神さま方へお参りすることにどれほどの意義を感じるかは、参詣なさる人のお考え次第です。でも、ちょっとだけ、お祀りされている神さまについて意識してみるのも、とても意義深いことだと感じました。
『古事記』『日本書紀』についてのお話は、山白浜神社と須屋浦神社のところで詳細を書いております。よろしければ、ご参照くださいませ。⇒ 関連記事:山白浜神社、須屋浦神社
浦々の神社の社殿はどれも似ている!? 鷹巣浦神社との区別
浦々の神社は、それぞれのご鎮座地に特徴があり、どれも魅力的です。大きな岩の上にご鎮座している(包ヶ浦神社)、ゴツゴツとした大量の岩に囲まれている(養父崎神社)、背後に奥ゆかしい緑がある(須屋浦神社)等々。そのような「見た目」の違いから、神社さまを区別することは容易です。ですが、ご本殿そのものは、いずれも厳島神社ゆかりの朱色を基本とした小さなお社となります。それでも、ご鎮座地に特徴があり、背景となる光景も異なるため、区別は容易です。
そんな中、鷹巣浦神社と腰少浦神社の二社については、いずれも砂浜にご鎮座しておられ、桟橋から徒歩で行くことができるという共通点を持っています。どちらも、歩いて行くことができる砂浜の上にあるということから、二社の外観は非常によく似ております。写真を見ただけでは、一瞬どちらがどちらなのか、分からなくなってしまいます。ご参詣時には、さしたる問題も起こりませんが、帰宅後、旅の思い出を整理しようとなった時、あれ? どちらがどちらの神社さまだったろうか? と記念写真を前に困惑してしまいます。
心配せずとも、ご参詣の順序などから、問題は解決すると思われます。けれども、二社には極めて分かりやすい区別方法がございますので、念のためお伝えしておきます。それは「賽銭箱」の有無と、社殿が建っている台座にあたる石垣の違いです。後者については、結局のところ、参詣時系列などを思い出して判断するしかないことなので、省略します(みどころには明記します)。その意味で、賽銭箱の有無は決定的です。腰少浦神社には「賽銭箱がない」のです。せっかくお参りしたのに、お賽銭をお入れできないという問題が生じますが、桟橋から遠いため、お賽銭の回収も一苦労となるゆえにでしょうか。じつは、浦々の神社には、ほかにも賽銭箱がない神社がございます。海からしか参拝できない神社などに、賽銭箱を置いたとしても、お賽銭をお入れできないのは当然なので、納得できますが。
お賽銭をお入れできないことが気になる方は、その分、賽銭箱がある浦々の神社でお入れするか、本社でまとめてお入れしましょう。
ご注意
賽銭箱が設置されていなかったのは、202406時点のご参詣時です。その後設置された可能性もございます。その場合は、台座の石垣で区別しましょう。
腰少浦神社・みどころ
浦々の神社のひとつでありながら、桟橋からも歩いて行くことができる有難い神社です。徒歩で参詣した場合、手前にある鷹巣浦神社と外観とてもよく似ているため、混乱します。社殿の前にご案内看板などはないですので(202406 現在)、現在ご参拝しているのが、腰少浦神社さまなのかどうか、ちょっと意識してみてください。
ご鎮座地の浜
社殿を背後から見るような形となってしまいますが、陸路赴いた場合、ご鎮座地付近の海岸はこのように見えます。
腰少浦神社・遠景
海上から訪問する際には、砂浜の後ろに正面から拝見した社殿のお姿がおさまります。
石垣
砂浜にご鎮座しているため、社殿の下にはご覧のような立派な石垣があります。じつは、この石垣の大きさと形とが、腰少浦神社と鷹巣浦神社を見分けるポイントとなります。鷹巣浦神社の石垣は、社殿より一回り大きい程度と、やや小振り。しかし、腰少浦神社の石垣は、こんなにも広くて立派なのです。
社殿
社殿に近付くと、石垣の規模が分からなくなるため、鷹巣浦神社との区別は難しくなります。しかし、ご覧のように、腰少浦神社の社殿前には、賽銭箱が設置されておりません。鷹巣浦神社には設置されておりますので、ここもポイントのひとつとなります。
お賽銭をお入れできないのが悲しいですので、徒歩で来られる方は、手前の鷹巣浦神社で二社分お入れしておくか、本社にてお入れください。
腰少神社付近の海
浦々の神社(特に砂浜の上にご鎮座している神社)はどこもそうですが、社殿付近から見える海の光景が長閑で麗しく、時間が経つのを忘れます。海上からの参拝ですと、時間も限られており、ぼんやりと海を眺めて過ごす余裕はないかと。その意味では、徒歩で行くことにも、十分な意義があると思っています。
腰少浦神社(廿日市市宮島町)の所在地・行き方について
ご鎮座地 & MAP
ご鎮座地 廿日市市宮島町
(※Googlemap にあった住所です)
アクセス
桟橋から徒歩で向かいます。厳島神社とは反対方向に向かい、右手に見えてくる車道に入ってください。歩くとかなりの距離がございますので、車道が通じていることを利用して、車で向かうことも可能です。海上からの参拝を希望される方は、宮島観光協会さまにお問い合わせください。浦々の神社を巡る船を出してくださっています。ただし、年に四回しか機会がございませんので、今日電話して明日乗せていただく、というわけには参りません。早め早めに計画を立てる必要がございます。
参照文献:『宮島本』
腰少浦神社(廿日市市宮島町)について:まとめ & 感想
腰少浦神社(廿日市市宮島町)・まとめ
- 厳島神社の末社で、浦々の神社のひとつ。「御島巡り」で四番目に訪れる神社であり、「第三拝所」にあたる。
- 「御島巡り」では、海上からの参拝となるが、桟橋から歩いて行くことも可能。その場合は陸からの参拝となるため、隅々観光できる
- 中津少童命をお祀りした典型的な海の神社。浦々の神社すべてに参詣することで、『古事記』『日本書紀』で伊弉諾命が「禊」を行なった際に生まれ出た海の神さま方を網羅したお参りが叶う
- お隣に鎮座する鷹巣浦神社と外観がよく似ているため、区別が難しい。二社同時に参詣する場合、参詣時刻を記録しておくなどしないと、後から記念写真を整理する時に迷うかもしれない。実際には、両者は鎮座している台座部分の石垣の規模が違うため、その点をおさえておけば、問題はない。なお、202406 時点の情報とはなるが、腰少浦神社には賽銭箱が設置されていなかった。鷹巣浦神社には設置されているため、それも区別方法のひとつ
- 正面から社殿に向かえる海上からの参拝が望ましいように思えるが、個人でボートを手配できない場合、海上からの参拝はハードルが高い。陸路から行けるとはいえ、それも歩くとかなりの距離があり、どのような行き方をすべきかが、悩ましい
- 陸路から向かえるご鎮座地の場合、海上から行ったとしても、上陸してゆっくり観光することが望ましい。長閑な海を眺めながら、至福の時を過ごすことができる。その意味では、慌ただしい時間となりがちな海路からの参詣より、陸路からの参詣をおすすめしたい。腰少浦神社に至るまでの道は「包ヶ浦自然歩道」という見晴らし最高の遊歩道でもある
- 車道がついていることを利用して、歩かずに行く選択肢もある。しかし、車道はだんだんと狭くなるし、駐車場もなかった気がする。まずは、桟橋の観光案内所に立ち寄り、専門家のご意見をお伺いするのが最も相応しいと思われる
腰少浦神社は桟橋から徒歩で気楽に行けるところにあります。宮島観光協会さまの定期観光船に日程を合わせられない方、浦々の神社をすべて見る必要もないとお考えの方にとっては、ここまででご参詣を終えるのがマストな選択かも知れません。宮島観光と言えば、厳島神社が中心となり、時間に余裕がある方はロープーウエイで弥山にもというのが定番です。それで終えてしまっても、特に問題はありません。浦々の神社も含め、それ以外の場所に向かう方々は、宮島に数日滞在される方かリピーターの方になってくるかと思います。
腰少浦神社さまへのご参詣には、すべて徒歩で向かった場合、半日はかかります(所要時間には個人差がございます)。半日あれば、桟橋付近のほかの観光資源をゆっくり回れる余裕ができますから、そちらを選んだほうがよいという考え方もございます。ここは本当に、皆さまの思い入れがどのくらい強いのか、何を中心にしたいのか、などによってそれぞれの観光ルートは変って参ります。その意味では、安易にこの神社に行くことをおすすめします、とは申し上げられないのが辛いところです。
そこで、宮島観光協会さまへの問い合わせが重要になってくるのです。事前に知っておくことで、必要十分な旅行日程を立てられることから、到着してから観光案内所に行くよりも確実です。電話やメールによる問い合わせですと、相手がどのような方なのかよくわからない、というデメリットはあります。年齢などを聞いて、若い方なので、十分に歩けるだろうと思っていたら、歩くのは苦手ですという場合もありますよね。ご高齢の方でも、時間のかかるハイキングコースをいとも容易く歩いて行かれる方は多いです。反対に、歩くの面倒……となる若い方の場合、半日もかけて小さなお社に参詣することは疲れるだけかもしれません。宮島観光の楽しみ方は人それぞれです。100人いれば、100通りの楽しみ方が存在します。ここに書かれていることは、あくまでも、執筆者個人の体験に基づいた楽しみ方のひとつに過ぎません。ぜひとも、皆さまにとって、もっとも相応しい楽しみ方で、宮島の魅力を存分に満喫していただきたい、そう思います。
こんな方におすすめ
- 厳島神社の摂社・末社を極めたい方
- 浦々の神社を極めたい方
オススメ度
(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)
宮島観光についての記事まとめアイキャッチにもなっているくらいなので、俺たちにとっては、すごくこだわりがある神社のひとつだよ。浦々の神社のご案内記事の中で、公開が最も遅くなってしまったけどね。
そうだね。宮島渡海四回目にしてすでにご参詣していたから。どれほどの歴史があるかわからない。
ミルが宮島を目指したのは、当初は、厳島合戦関連史跡を回ることが目的だった。いつの間にか、合戦関連史跡だけの島ではなくなっていき、今は『平家物語』の島を通り越して、厳島神社の島になった。じつは、一般観光客の方々にとっては、宮島=厳島神社の島なので、普通になった、とも言えるね。
最初は普通ではなかった、そういうことね?
楽しみ方は様々、って自分で書いているじゃないか。色々な楽しみ方があっていいんだよ。どんな楽しみ方もできてしまい、それぞれがそれぞれに魅力的、それが厳島という島なんだ。俺にも最近になって、やっと理解できたことになるけどね。
長く通い続けたゆえに到達できた境地ですね。宮島は最高ってことは、最初からわかっていたけれども、本当に最高です! ぜひとも、皆さまなりの宮島の萌えポイントを見つけてくださいますように。
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みやじま・えりゅしおん
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