みやじま・えりゅしおん

四宮神社(広島県廿日市市宮島町)

2025-01-13

四宮神社・鳥居3

安芸国一宮は厳島神社ですが、四宮はどこでしょうか。「○○国△宮」については、都道府県によっては特定されておらず、吾こそは一宮と主張するところが複数あったりする例もあるようです。数値が小さいほど大規模な神社となり、一宮はそれこそ、その国で最も格式の高い神社です。反対に、数値が大きくなるほど規模は小さくなりますが、市町村レベルでの氏神さまとしてより身近な存在となります。今回は宮島にある四宮、その名も四宮神社をご案内いたします。まさに、宮島の皆さまの神社です。(訪問回数5回以上)

広島県廿日市市宮島町の四宮神社とは?

厳島神社の末社のひとつです。紅葉谷公園付近にご鎮座されています。四宮は毎年の例祭時に、厳島神社平舞台の火焼前(ひたさき)から田面船と呼ばれる船を流す行事が有名です。地元の方々にご案内いただくと、必ず話題に上ります。

四宮という名前からわかるとおり、安芸国四宮でもあります。地元、宮島の人々の神社として、深く信仰されています。

四宮神社・基本情報

ご鎮座地 〒739-0588 廿日市市宮島町南町 341
御祭神 加具土神
主な建物 社殿、鳥居、狛犬
主な祭典 例祭(旧暦八月一日) 
(参照:『宮島本』、建物は目視、ご鎮座地は Googlemap)

四宮神社・歴史と概観

加具土神と秋葉大明神

四宮神社の御祭神は加具土神です。例によって例のごとく、神さまのお名前には様々な表記法があります。手許のワープロソフトで「かぐつち」と入力すると出てくるのは「軻遇突智」です。ここでは、『宮島本』の表記を採用しています。「軻遇突智」は『日本書紀』における表記のようで、『古事記』では、「火之迦具土神」と書くそうです(参照:『日本 神さま事典』)。

名前の通り、「火の神」です。火の神と聞いてピンと来た方は、神話に精通しておられる方です。とはいえ、精通していない執筆者でも思いついたので、あまりにも有名な物語かと思います。伊弉諾・伊弉冉の神生みで、伊弉冉は火の神を生んだことで、火傷を負い亡くなってしまいます。愛しい妻を失った怒りのあまり伊弉諾はその火の神(=軻遇突智)を斬ってしまいます。その後は、黄泉国に亡き妻を探しにいく話に続きます。

火の神はやがて、「火伏せの神」となって深く信仰されるようになりました。秋葉神社と愛宕神社の二社がその総本社で「秋葉信仰」と呼ばれます。なぜ二種類の神社があるのかと言えば、秋葉神社には軻遇突智がお祀りされているのに対して、愛宕神社のほうには、伊弉冉がお祀りされているのだそうです(参照:同書)。

御由緒看板は見つけられませんでしたが、地元のガイドさまから火除けの神、秋葉大明神であるとご教授いただいた記憶がございます。

「たのもさん」

元は火除けの神だった、四宮ですが、現在は少しく性格を変えています。単なる山火事防止のようなご利益だけではなくなっているのです。例祭で「たのもさん」という舟が流される行事は有名です。それゆえに、たのもさんの神社=たのも神社とも呼ばれているようです。名前の通り、火除けに限らず、なんでも頼んで OK なのです。

「たのもさん」の行事は、豊作を祈願してのものだとお伺いした記憶がございます。数百層の船をつくり、満潮時に平舞台に流すのだそうです。その舟が大鳥居をくぐっていくと、豊作になるといいます。

飾り付けられた多数の舟が流れて行く様は圧巻と思われ、ぜひとも拝見したいと思いつつ、まだその望みは叶っていません。それこそ、「たのも神社」に願い事をしたらいいのかもしれません。

さて、流されていった舟はどこへ向かうのでしょうか。対岸大野の鯛山稲荷神社です。⇒ 関連記事:鯛山稲荷神社

四宮神社・みどころ

みどころはなんといっても「たのもさん」の行事だと思われますが、なかなかその日にご参詣することは難しいでしょう。ご鎮座地が紅葉谷公園付近ですから、それこそ紅葉の季節に訪れれば見事であると思われます。旅行代金が高騰するため、こちらも叶っていません。

鳥居

四宮神社・鳥居2

鳥居は三基ございます。こちらが、最も手前にある立派な石鳥居です。扁額に「大国神社」「四宮神社」と併記されています。でも、大国神社って?

四宮神社・鳥居

長い石段の中程にもう一基。こちらには「四宮神社」と書かれています。その先に、もう一つ、赤い鳥居が見えています。

社殿

四宮神社・社殿

ご本殿を脇から拝見しました。奥ゆかしい緑の中に佇んでいるお姿がわかります。

四宮神社(横から見た図)

四宮神社(廿日市市宮島町)の所在地・行き方について

ご鎮座地 & MAP 

ご鎮座地 〒739-0588 廿日市市宮島町南町 341
(※Googlemap にあった住所です)

アクセス

柳小路から真っ直ぐ行く方法のほか、うぐいす歩道、包ヶ浦自然歩道なども接続しています。ロープーウエイの停留所を通り越し、右手の道を行くと「紅葉橋」があります。橋を渡ればもう少しです。

参照文献:『宮島本』、『日本 神さま事典』、『日本書記』(現代語訳)

四宮神社(廿日市市宮島町)について:まとめ & 感想

四宮神社(廿日市市宮島町)・まとめ

  1. 厳島神社末社のひとつ
  2. 紅葉谷公園付近にあり、奥ゆかしい緑に包まれている。紅葉の季節に赴けば、紅葉谷公園の紅葉とともに満喫できる
  3. 御祭神は火具土神で、秋葉信仰にかかわる火除けの神さま。伊弉諾・伊弉冉の神生みの物語で、火の神を生んだせいで火傷を負い、伊弉冉は亡くなった。そのせいで、火具土神は伊弉諾に斬られてしまう。神話はその後、伊弉諾が伊弉冉に会うため、黄泉国に向かうくだりへと続く。火の神が転じて「火除けの神」となり、秋葉神社の総本社に祀られている
  4. 安芸国四宮であり、地元宮島の人々に篤く信仰されている神社。例祭の時、「たのもさん」と呼ばれる飾り付けた舟を流す行事が有名。舟が無事に鳥居をくぐれば、豊作になるという
  5. 神社そのものも、たのもさんの愛称で親しまれている。火除けの神にとどまらず、多くの願い事を叶えてくれる有難い神さま

初回はガイドさんとご一緒でした。多くの学びがありました。この場を借りて御礼申し上げます。それ以降は、ご案内なしで何度も訪れています。神社は一宮、二宮……といくにしたがい、だんだんと地元に密着した身近な存在となっていきます。四宮は町内会の神社のような感じだねとご教授いただいたのを、昨日のことのように覚えております。

「たのもさん」についても多くを教えて頂きましたが、歳月が流れるにつれ、記憶も曖昧となってしまいました。今はひとり(プラス一名)でも自由に行き来できるようになりましたが、まだまだ宮島を極めたとはほど遠いです。地図をご覧になればお分かりの通り、四宮へは多くの道が接続しております。つまりは、何通りもの行き方が存在するのです。宮島の小路はどれもそれぞれに風情がありますので、できれば、すべての行き方を試してみたいと思いつつ、なかなかそんな余裕はありません。また、きちんと道がついているにもかかわらず、どうでもいいところで迷ってしまうのも宮島です。

回数通うことで知識も増えますし、感覚でわかるようになります。人生のすべてをこの島に捧げることになりますが、悔いはありません。日本全国、素晴らしい観光地は数多くあれど、どうやらこの島に魅入られてしまったようです。

こんな方におすすめ

  • 厳島神社の摂社・末社を極めたい方に
  • 普通に神社巡りを趣味とする方に

オススメ度


(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)

五郎セーラー服吹き出し用イメージ画像
五郎

いつも行き当たりばったりでここについているミルなのであった。

ミル吹き出し用イメージ画像(涙)
ミル

偉そうに何?

五郎セーラー服吹き出し用イメージ画像
五郎

色々な行き方があるってことは、行き先が別のところでも行き過ぎる可能性が高いってことだろ? 最後の最後に、この神社目的で来て「脇からも拝見します」をやったよね。

ミル吹き出し用イメージ画像(笑顔)
ミル

山口の神社を見慣れている人って、なぜか脇からも拝見してるよね。大切なお友達が同じことをやってた。あと、当然のことながら「最後の最後」ではないから。

腰少浦神社付近での記念写真
みやじま・えりゅしおん

宮島旅日記のまとめページ(目次)です。厳島神社とロープーウエーで弥山頂上は当たり前。けっしてそれだけではない、宮島の魅力をご紹介。海からしか行けない場所以外は、とにかく隅々歩き回りました。宮島の魅力は尽きることなく、旅はなおも続きます。

続きを見る

荒胡子神社の夜景
厳島神社境外摂社&末社

世界文化遺産・厳島神社の摂社・末社合計二十五社の一覧表。摂社、末社、外宮、境内社などの用語解説。三翁神社についての説明と、そのほかのすべての神社への歴史、観光情報、所在地アクセスについてがわかるページへのリンクを掲載。

続きを見る

  • この記事を書いた人
ミルイメージ画像(アイコン用)

ミル@周防山口館

廿日市と東広島が大好きなミルが、広島県の魅力をお届けします

【取得資格】
全国通訳案内士、旅行業務取扱管理者
ともに観光庁が認定する国家試験で以下を証明
1.日本の文化、歴史について外国からのお客さまにご案内できる基礎知識と語学力
2.旅行業を営むのに必要な法律、約款、観光地理の知識や実務能力
【宮島渡海歴三十回越え】
厳島神社が崇敬神社です
【山口県某郷土史会会員】
大内氏歴代当主さまとゆかりの地をご紹介するサイトを運営しています

-みやじま・えりゅしおん