みやじま・えりゅしおん

御床神社(広島県廿日市市宮島町)

浦々の神社・御床神社

宮島をぐるりと取り囲むように鎮座する浦々の神社。小さなお社が多く、海上からしか参拝できないなどの条件もあるため、すべてにお参りできた! という方はあまりいらっしゃらないかも知れません。いずれも宮島ならではの魅力的な神社さまばかりですので、できればすべてにご参詣していただきたいと切望しております。

今回はそんな浦々の神社から、御床神社さまについてご案内します(訪問回数1回)。

広島県市廿日市市宮島町の御床神社とは?

宮島の浦々の神社を巡る「御島巡り」で九番目に訪れる神社にして「第七拝所」にあたります。

厳島神社本社と同じ三女神さまが御祭神となっていること、厳島神社の御神紋はこの神社が鎮座する大岩の割れ目から考案されたことなど、本社とたいへんにゆかりが深い神社さまとなります。

御床神社・基本情報

ご鎮座地 廿日市市宮島町
御祭神 市杵島姫命、田心姫命、湍津姫命
主な建物 社殿、鳥居、灯籠 
(参照:『宮島本』、建物は目視、ご鎮座地は Googlemap にあったもの)

御床神社・歴史と概観

「御島巡り」の第七拝所

宮島の浦々の神社を巡る「御島巡り」で九番目に訪れる神社で、「第七拝所」とされています。九番目に訪れるのに「第七拝所」なのはなぜか? これ、本当に謎です。最後に参拝する大元神社も含めると、「御島巡り」では合計十の神社に参拝するのですが、「拝所」として数えないところもあるのです。

「七浦巡り」という言葉もありまして、七ヶ所の神社を指しますが、同じ海上から参拝する神社なのに含まれないところと含まれるところがあるのです。「七浦」に数えない神社、島巡りで「拝所」になっていない神社が、粗略に扱われているようなことは決してありません。むしろ、重要なイベントが行われているケースもございます。それゆえにか『宮島本』では、これら海上から参拝する神社についての記述を「浦々の神社」としています。当サイトでもそれに倣い、「浦々の神社」としている次第です。「七浦」としてしまうと、入っていない神社について記述することができませんからね。

御床神社に関しては、七浦にも入っており、拝所にもなっておりますので、この問題について悩む必要はございません。

「御島巡り」について詳しくは、以下の記事にまとめました。

厳島神社・海から見た大鳥居(3)
浦々の神社(広島県廿日市市宮島町)

「七浦巡り」がやりたい~というわがままな願いが叶い、地元の方のご厚意により船で宮島をぐるりと一周。浦々の神社すべての写真をご紹介します。そこらのスマートフォンで素人が撮影していることだけが唯一惜しまれるところです。

続きを見る

仮の神殿と神紋誕生の地

厳島神社の創建者・佐伯鞍職が、神烏のお導きによって宮島の浦々を巡り、社殿建設の地を探したという伝説はあまりにも有名です。現在本社がご鎮座しているのが、その選ばれし場所です。ご鎮座地は無事に決まりましたが、豪勢な社殿はすぐには完成しません。そこで、社殿が完成するまでの間、女神さま(=市杵島姫命)はこちら・御床神社でお過ごしになられました。いわば、本社社殿が完成するまでの期間、しばらくお住まいになった仮の神殿ですね。やがて、女神さまは本社に移られましたが、御床神社のご祭神は今も女神さまはじめ、宗像三女神です。立派な灯篭があるのも頷けますね。

なお、厳島神社の神紋はこの神社が建っている場所の岩の割れ目から考え出した、とされています。「三ツ亀甲花菱紋」がそれです。

御床神社の社殿は、大岩の上に鎮座しており、岩には亀裂が入っております。確かに、それらしきデザインを考案できてしまうかもしれません。

厳島神社神紋「三ツ亀甲花菱紋」

「三ツ亀甲花菱紋」って? と思われた方も、厳島神社にお参りした際、必ず目にしているはずです。上の写真で緑枠で囲った部分にございます。厳島神社の御神紋として、至る所に描かれております。なるほど、あれか! となるはず。まじまじと拝見すると、お名前の由来もなんとなくわかりますね。

御床神社・みどころ

浦々の神社の中で、本社と同じ神々をお祀りしているのは御床神社だけです。また、女神さまが仮住まいをしていたという伝説や、御神紋がデザインされた由来なども御床神社ならでは。社殿の前には石段もあり、船をつけてお参りすることも可能となっています。

社殿

御床神社・社殿小さいながらすべてがそろっているという雰囲気。同じ岩の上にご鎮座と言っても、包ヶ浦神社のようにまんまるな大岩の上ではないため、普通にご参詣可能です。左右を固める大きな灯籠が、とても立派です。

しかし、残念なことに、御神紋が考案されたという岩の亀裂については見ることができませんでした。ご覧のように、潮が満ちており、海中になってしまっていたためです。

脇から拝見

浦々の神社・御床神社(脇から見た図)

潮が引くまで待っている時間はなかったため、御神紋デザインの元となった台座の岩は確認できませんでした。『宮島本』に載っているお写真がわかりやすいので、図書館などでご覧ください。なお、例によって脇からのお姿を確認すると、わずかに岩の亀裂が目視できました。

これだと脇から見た構図となってしまうので、じっさいに「神紋」デザイン発案の元となった割れ目とは無関係ですが、正面からもこのような岩の割れ目は見えるはずですので、潮が引けば一目瞭然かと思います。

御床神社(廿日市市宮島町)の所在地・行き方について

ご鎮座地 & MAP 

ご鎮座地 廿日市市宮島町
※Googlemap にあった住所です。

アクセス

残念ながら、海上からしかご参詣できません。ボートを用意できれば、上陸してお参り可能です。宮島観光協会さまの浦々の神社を巡るツアーに申し込みをしてください。

参照文献:『宮島本』

御床神社(廿日市市宮島町)について:まとめ & 感想

御床神社(廿日市市宮島町)・まとめ

  1. 宮島を取り囲むように鎮座する浦々の神社のひとつ。厳島神社の末社で、「御島巡り」の「第七拝所」
  2. 厳島神社の創健者・佐伯鞍職は、市杵島姫命のために社殿を建てるにふさわしい地を探し、神烏に導かれて浦々を巡った。鞍職が巡ったそれらの地に建てられたのが、浦々の神社だとされている。現在厳島神社が鎮座しているのが、もっともふさわしい地として選ばれた場所となる。御床神社は、厳島神社の社殿が完成するまでの間、市杵島姫命が仮住まいをしたところといわれる
  3. 御祭神は市杵島姫命はじめ、宗像三女神。本社本殿に移られた後も、仮の社殿だった場所が守り伝えられているということになる
  4. 厳島神社の御神紋「三ツ亀甲花菱紋」は、御床神社が鎮座している大岩に、亀裂によって生じた模様から考案されたと伝えられている。台座の大岩にはそれらしき亀裂を見ることができるが、潮の満ち引きの関係で、海中に沈んでいる時間帯がある
  5. 市杵島姫命、佐伯鞍職と神烏、厳島神社の神紋と神社の起源にかかわるあれこれの伝説があり、厳島神社摂社・末社の中でも、きわめて貴重な存在といえる

御祭神が宗像三女神という神社さまは、全国に数知れません。市杵島姫命おひとりに限定しても、それは変わらないでしょう。もはや、市杵島姫命さまは厳島神社(宮島)だけの神さまであるかのように感じており、じつはそこら中にお祀りされているという事実を忘れております。そのような、とんだ勘違いにして独占欲が強い観光客の戯言ながら、厳島神社以外にも市杵島姫命さまがお祀りされているいくつかの神社については、本社同様に愛しています。不思議と、それらの神社には共通の奥ゆかしさがあり、どこも魅力的に感じられてしまいます。

浦々の神社はすべて素晴らしいのですが、どこかひとつ選んでください、と問われれば間違いなく御床神社です。これほどまでに魅了されているという思いは、市杵島姫命さまに届いておられるでしょうか。

御床神社のご鎮座地の大岩から、厳島神社の御神紋が考案されたと伝えられることも、この神社の魅力のひとつです。浦々の神社は、どこも個性的で、じつにさまざまな形態をしています。岩の上にご鎮座されているのも、御床神社だけではありません。しかし、それらの岩はどこも違った様相です。好みの問題とはなるのでしょうが、御床神社ご鎮座地の台座の岩は、どことなく洗練された雰囲気です。大岩には、亀裂が走り、何やら言葉にできない独特の模様を形作っています。ここから神紋が生まれたというのは大いに頷けます。御神紋ですから、単に岩に亀裂が入っているなどと簡単にすませてはなりません。きわめて神聖なものととらえるべきです。

その亀裂を見ることがかなわず、それなりにショック甚大でした。二度目の訪問は難しく思われる場所に、無理してお連れいただいた身分ですので、なおさらです。潮の満ち引きなど、海辺に住んでいなければ、意識もしない話題です。しかし、厳島神社ご参詣に際しては、潮の満ち引きの問題は最重要課題と言っても過言ではないほど重要です。それゆえに、宮島観光協会さまのホームページには潮見表が載っているんです。すべてが海岸線に近接している浦々の神社に関しても、潮見表は重要です。ここはもう、ボートを操れる地元の方々限定になってくるお話で、一般の観光客にはどうにもできません。ですが、本社の社殿が、満潮と干潮とでまるで違った趣となることからもわかる通りです。出来得ることならば、潮が満ちた時、引いた時、それぞれの時間帯にご参詣してみたいものです。

こんな方におすすめ

  • 厳島神社の摂社・末社を極めたい方に
  • 浦々の神社を極めたい方に

オススメ度


(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)

五郎セーラー服吹き出し用イメージ画像
五郎

岩の亀裂か。確かに潮の満ち引きで運命が分かれるね。

ミル吹き出し用イメージ画像(涙)
ミル

本社ならばね、いつでも時間の調整をしてご参詣できるけれどね。船がないと、浦々の神社には行けないからね。

鶴千代吹き出し用イメージ画像(仕官)
鶴千代

お前ら、未だに船を求めて彷徨っているのか。もはや永遠に逃れられない定めなのだな。

五郎セーラー服吹き出し用イメージ画像
五郎

お前も本当に懲りない奴だな。その「船を求めて彷徨う」って言葉、もう何度目? 俺たち、親切な船長さんのご案内で、ちゃんと女神さまの神社に参拝できているから。亀裂が云々とか、我儘なことを言っているのはミルだけだ。お前なんか、御床神社にご参詣できてもいないじゃないか。

鶴千代吹き出し用イメージ画像(仕官)
鶴千代

(元就公もこの神社にご参詣なさったであろうか。もしそうならば……)

五郎セーラー服吹き出し用イメージ画像
五郎

何を考えているかわかるけど、お前に船を貸してくれる人なんかいないからな。毛利元就の足跡を辿りたいなら、この神社より重要なところはたくさんあるんじゃないのか? 俺とミルには関係ないけど。まずは安芸高田にでも行けば? 

腰少浦神社付近での記念写真
みやじま・えりゅしおん

宮島旅日記のまとめページ(目次)です。厳島神社とロープーウエーで弥山頂上は当たり前。けっしてそれだけではない、宮島の魅力をご紹介。海からしか行けない場所以外は、とにかく隅々歩き回りました。宮島の魅力は尽きることなく、旅はなおも続きます。

続きを見る

厳島神社・海から見た大鳥居(3)
浦々の神社(広島県廿日市市宮島町)

「七浦巡り」がやりたい~というわがままな願いが叶い、地元の方のご厚意により船で宮島をぐるりと一周。浦々の神社すべての写真をご紹介します。そこらのスマートフォンで素人が撮影していることだけが唯一惜しまれるところです。

続きを見る

荒胡子神社の夜景
厳島神社境外摂社&末社

世界文化遺産・厳島神社の摂社・末社合計二十五社の一覧表。摂社、末社、外宮、境内社などの用語解説。三翁神社についての説明と、そのほかのすべての神社への歴史、観光情報、所在地アクセスについてがわかるページへのリンクを掲載。

続きを見る

  • この記事を書いた人
ミルイメージ画像(アイコン用)

ミル@周防山口館

廿日市と東広島が大好きなミルが、広島県の魅力をお届けします

【取得資格】
全国通訳案内士、旅行業務取扱管理者
ともに観光庁が認定する国家試験で以下を証明
1.日本の文化、歴史について外国からのお客さまにご案内できる基礎知識と語学力
2.旅行業を営むのに必要な法律、約款、観光地理の知識や実務能力
【宮島渡海歴三十回越え】
厳島神社が崇敬神社です
【山口県某郷土史会会員】
大内氏歴代当主さまとゆかりの地をご紹介するサイトを運営しています

-みやじま・えりゅしおん