はつかいち町歩き

釈迦堂(広島県廿日市市地御前)

2024-09-17

釈迦堂・全体像

広島県廿日市市地御前の釈迦堂とは?

厳島神社・外宮にあたる、地御前神社からほど近い所にあります。かつて、神仏習合していたことから、地御前神社を構成した建築物の一部ではないかと考えられます。残念ながら、証拠となる資料が見付けられなかったため、それについては証明できませんが、地元では「釈迦堂」として、大切に信仰されています。

名前の通り、中には釈迦如来さまが安置されております。

釈迦堂・基本情報

所在地 〒738-0042 廿日市市地御前4丁目1
※Googlemap にあった住所です
中に釈迦如来坐像が安置されています。 

釈迦堂・歴史と概観

釈迦如来坐像を安置した小さなお堂

観音さまを安置したお堂は観音堂、釈迦如来を安置したお堂は釈迦堂……と、多くのお堂に参詣して回るうち、自然にそのことを理解しました。そんなの当たり前ではないか、と笑われてしまいそうですが、何の知識もない素人がぼんやりと歩いていると、そんな感じだったりします。

有名な観光地である、地御前神社のすぐ近くにございますので、どなたもお堂の前を通っているかと思われるのですが、皆さん地御前神社を目指しておられ、小さなお堂は見落とすことが多いです。特に由来看板などが立っているわけではないですので、なおさらです。観光協会の町歩きパンフレットには次のように書かれていました。

本尊の釈迦如来像は丈六像といわれ、坐像高290㎝、膝張230㎝という。寄せ来造り、室町中期を下らぬ貴重な大作。
出典:観光協会パンフレット

「室町中期を下らぬ」というくだりに惹き付けられます。大内氏の時代にはすでに存在していたことになるからです。彼の地を直轄支配してしまった凌雲寺さま以降のご当主さまはこの目でご覧になったかもしれませんね。

釈迦堂修理についてのあれこれ

『廿日市町史』には、内部に安置された釈迦如来さまの坐像写真とともに、釈迦堂修理についての逸話が書かれた説明文がございます。地御前神社修築事業についての記事の一部分であることからも、釈迦堂がかつては神社の一部分であったことは、疑いない気がいたします。しかし、そこに資料として挙げられている『厳島文書』の中には、外宮の建物一覧の中に、釈迦堂が載っていません。引用されているのは、三種類の年度のものだけですので、遡れば載っているのかもしれませんが。『厳島文書』は手許にないので、残念ながら典拠を挙げられない次第です。

なお、同じ『廿日市町史』に『厳島図絵』の資料が載っており、そこには釈迦堂も記されているという記述がございますので、やはり釈迦堂がかつては、厳島神社外宮に附随した建物であったことは間違いないとみて差し支えない気がいたします。

さて、『町史』でこれらの内容に紙幅を割いているのは、地御前神社についての考察と同時に、そのメンテナンス事業についてのお話を紹介するためでもあります。ことに、釈迦堂についての記述については興味深いものでした。著名な寺社のメンテナンスの問題は、いずこの地においても極めて重要です。どんなに大切にしていても、建築物の経年劣化は避けられないことです。由緒ある格式の高い寺社などであれば、修繕もできずにそのまま放置するとなれば、所在地を管理する勢力にとっては、ちょっと恥ずかしいことになります。しかし、どこの勢力も財政は非常に苦しかったわけで、場合によっては要修繕箇所が見つかってもすぐには対処できなかったり、泣く泣く倒壊するに任せたりして寺社が後世に伝えられなかったりということが皆無ではありませんでした。何事にもお金がかかりますからね。

かつて、大寺院の造営料国にどこかの国が充てられたりといったことがあったのと同様、聖職者の土地は免田として、そのかわり修繕を怠らぬよう、などという政策がとられていました。ところが、釈迦堂の管理を任され、そのための免田も与えられていた東坊深教という人物は、きちんと釈迦堂の整備を行なわなかったため、お堂は大破してしまいました。この時、この地を治めていたのは、大内氏から桂元澄の時代も経て、穂井田元清(桜尾城主)となっていました。元清は怒って深教から免田を取り上げ、元清自らで修繕を行なうことにしました。

すると、深教の後任として住職となった教善という人が、熊谷氏を仲介に立て、自らにやらせてくださいと申し出たので、元清は教善に免田を与えてその管理を任せたそうです。その後のことは特に書いていませんが、釈迦堂が現在も立派に残っていることから、以後はきちんと管理がなされてきたであろうことがわかります。⇒ 関連記事:地御前神社

釈迦堂・みどころ

みどころといっても、お堂の建物外観を見ることができるだけです。内部の貴重な仏像については、自治体発行の書籍などで確認することが可能です。

釈迦堂外観

釈迦堂・外観

中の釈迦如来さまの坐像は拝むことができます(20210511現在)。格子の隙間がガラス張りですので、覗くことができるのです。お顔には御簾がかかっておりましたが、下半身ははっきりと見えました。覗き見るなんてあまりお行儀がいいこととは申せませんし、おすすめしていいものかどうかわかりませんが。むろん、写真撮影などは憚られます。

あるいは、扉を開けて、きちんとお参りできた可能性もございますが、記憶が定かではなくなってしまいました。ガラス越しに見ていたことから、扉は開かなかったのかもしれません。貴重な仏像が安置されている場合、鍵をかけることが多くなっているのが昨今です。昔は、貴重な文化財にイタズラをしたりする不心得者や、自らの所有物にしようと持ち去るような人もいなかったので、鍵などなかったのですが……。

後は、小動物のイタズラも目立つようになってきたため、そのために鍵をかけるという例もございます。

その反面で、え!? こんな貴重な仏像が見放題!? というケースもあります。ガラス越しでよければなのですが、こちらもそのケースになります。

釈迦堂(廿日市市地御前)の所在地・行き方について

所在地 & MAP 

所在地 〒738-0042 廿日市市地御前4丁目1 

※Googlemap にあった住所です。

アクセス

広電「地御前」駅から徒歩圏です。真っ直ぐの道であり、地御前神社に向かえば、途中必ず通過することになります。

参照文献:観光協会パンフレット、『廿日市町史』

釈迦堂(廿日市市地御前)について:まとめ & 感想

釈迦堂(廿日市市地御前)・まとめ

  1. 厳島神社外宮・地御前神社にほど近い場所にある
  2. 神仏習合していた時代、仏教系建築物として、地御前神社を構成する建物のひとつではなかったかと思われる(『厳島図絵』などから)
  3. 堂内に安置されている釈迦如来像は、室町時代を下らないと考えられる貴重な作品

最初、ガイドさんと一緒に地御前神社にご参詣した際には、まったくその存在に気付かず。二回目に一人で訪れた際、なんだろう、これ? と思ったのが最初です。Googlemap 調べたところ、「釈迦堂」とありましたので、そこらにあるお堂の一つが、地御前神社の付近にあったんだろうと考えた次第です。

そこで、地御前神社のご案内記事のところに「付近にあったもの」として写真を掲載。神社との関連は不明と書いていました。不明と書きながらも、神社の項目に載せていたのは、近くにある以上、何らかの関連があるのだろう、というところまでは、さすがのど素人でも想像できたからです。

三度目のご参詣では、山口からの友人たちに「釈迦堂です」と偉そうに語っていたものの、その謂れの解説はできず。その後、観光協会の町歩きのコースにも入っている有名なお堂であることがわかり、さらに、念願叶って『廿日市町史』を入手できたことで、漸くその由来がなんとなく分かって来たところです。学びはまだまだ続いており、最終的には、地御前神社が創建された時の姿を知りたいと思っています。さて、いつのことになるのやら。

しかし、どこであるにしろ、たった一度きりの訪問では何も分からないということの、とても分かり易い例です。資料を持っているか否かにも影響されるところが大きいですが。むろん、時間が限られた中で、すべての訪問箇所について、何度も何度も繰り返し通うことは困難です。残念ながら一度きりになるケースのほうが多いでしょう。その場所についての思い入れがどのくらい強いか、すべてはそこに尽きると思いました。

こんな方におすすめ

  • 厳島神社やその外宮である地御前神社の全貌を明らかにしたくなった人
  • 町中のお堂や仏像に関心がある人

オススメ度


(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)

五郎吹き出し用イメージ画像(涙)
五郎

これって、そんなにすごいお堂だったんだね……。

鶴千代吹き出し用イメージ画像(怒る)
鶴千代

無知はみっともないな。

五郎吹き出し用イメージ画像(怒)
五郎

お前に言われたくないよ。俺たち、数え切れないほどお堂を見てるんだからな。

ミル吹き出し用イメージ画像(涙)
ミル

数え切れないほど見ているのに、ほとんど何もわかっていないね……。

大頭神社・鳥居
はつかいち町歩き

廿日市の観光資源と言えば、宮島と厳島神社の知名度が圧倒的です。それゆえに、ほかの観光地の影が薄くなってしまっている嫌いがあるのが、とても残念です。けっして、それだけではないですよ、ということを証明したく、町中を歩き回っています。

続きを見る

  • この記事を書いた人
ミルイメージ画像(アイコン用)

ミル@周防山口館

廿日市と東広島が大好きなミルが、広島県の魅力をお届けします

【取得資格】
全国通訳案内士、旅行業務取扱管理者
ともに観光庁が認定する国家試験で以下を証明
1.日本の文化、歴史について外国からのお客さまにご案内できる基礎知識と語学力
2.旅行業を営むのに必要な法律、約款、観光地理の知識や実務能力
【宮島渡海歴三十回越え】
厳島神社が崇敬神社です
【山口県某郷土史会会員】
大内氏歴代当主さまとゆかりの地をご紹介するサイトを運営しています

-はつかいち町歩き