関連史跡案内

鰐鳴八幡宮(山口市小鯖)

2022年9月18日

鰐鳴八幡宮・社殿

山口県山口市上小鯖の鰐鳴八幡宮とは?

平安時代に宇佐八幡宮から勧請されたといわれる八幡さまです。珍しい社名は、勧請の際、宇佐から神さまをお送りして付き従って来た鰐が神さまとの別れを惜しんで泣いた(鳴いた)という言い伝えから来ています。ご鎮座地から小鯖八幡宮とも呼ばれています。

本殿、拝殿と「小鯖の板碑」と呼ばれる板碑が山口市指定文化財となっているほか、春と秋のお祭りに行なわれる「小鯖代神楽」が無形民俗文化財となっています。

鰐鳴八幡宮・基本情報

ご鎮座地 〒753-0213 山口市上小鯖 583
御祭神 主祭神:八幡大神、足仲彦神、神功皇后、配祀神:仁徳天皇、天御中主神、大歳神、高龗神、 天水分神、国水分神、肆長津彦神、肆長戸辺神
主な祭典 例祭(十月最終日曜日)、春祭(四月十六日に近い日曜日)
社殿 本殿、幣殿、 釣屋、拝殿、惣拝殿・楼門、向拝
境内神社 柊神社
建築物 鳥居、大灯籠、狛犬、放生石、玉垣、景行銘、板碑、御旅所神輿台、神輿庫、手水舎、社務所
特殊神事 御廻在(田頭神幸祭・七月土用三日目)、花和里若宮社御神 幸(四年毎に一度例祭当日)、風鎮祭(八月十八日)
ホームページ https://o3880000goo.web.fc2.com/index.html
(参照:『山口県神社誌』、案内看板)

鰐鳴八幡宮・歴史

平安時代中期、寛弘・長和の頃(1004~16)、宇佐八幡宮から勧請されたと伝えられています。そのため、寛弘元年(1004) を創建年としています。宇佐から勧請した八幡さまは山口湾から椹野川を渡り、鍔石から上陸されました。神様を慕ってついて来た鰐は、そこで別れを惜しんで鳴い(泣い)たといわれています。この言い伝えから「鰐鳴八幡宮」と呼ばれるようになりました。(参照:説明看板)

大内氏・毛利氏の領主や藩主の崇敬が篤く、社領証判が伝えられています。藩政期、藩主・毛利宗広公の二女・誠姫が病に罹ったとき、この神社の霊験があらたかであったという記録が残されており、それゆえ、鳥居を献じて祈ることで、女性の病に霊験があるといわれています。(参照:『山口縣神社誌』)

ところで、別れを惜しんだ「鰐」って?

ところで、神さまを慕ってついてきた「鰐」とはいったい何を指しているのでしょうか? 鰐はもちろん鰐じゃないか、ほかに何があるのさ? って仰ると思うのですけど。え? そんなはずないと気付いておられた? そうですよね……。トロいので、鰐=鰐(つまり動物園にいるワニ → 🐊)以外ないよね、と思っておりました。なので、この時代、すでに日本に鰐がいたのか!? とビックリしていたのです。そんなはずはないであろうことから、何かそれに似た魚的な生物を当時は鰐と称していたのだろう、と。

ところが、とんでもない勘違いだったんですよね。『大内文化探訪ガイド No.1中世文化の里』によれば、鰐というのは「当時の海上生活者のことであろうといわれてい」るとのことです。だとすれば、「鳴」くというよりも「泣」くが相応しいと思われたりするものの、神さまをお慕いして涙した人々がいた、というお話ならばすんなりと心に落ちます。鰐が鳴く(泣く)という発想もなかなかに感動的だと思いますが(汗)。

鰐鳴八幡宮・みどころ

本殿と拝殿、および石造の板碑一基(貞治六年)が山口市指定有形文化財となっています。また、例祭時に奉納される、小鯖代神楽舞は無形民俗文化財です。

社宝として、八幡縁起絵巻(上下二軸・室町時代作・相良遠江守武任寄進)、三十六歌仙 (伝相良遠江守武任筆)、三十六歌仙 (安政六年・山口塗師増見定祐画工右近素石)、狛犬一対(木造)、社領証判書(大内・毛利氏四筆)があります。(参照:『山口縣神社誌』)

天文の国難で犠牲となった相良武任にかかわる社宝が二つもあることに驚きです。『八幡縁起』は上下ニ巻本の絵巻物で、相良が寄進したと伝えられているそうです(参照:『大内文化探訪ガイド No.1中世文化の里』)。さらに、『三十六歌仙』(これも絵巻物でしょうかね?)は、相良直筆というのですから、すごいことです。陶との確執ばかり話題となってしまうお方ですが、お父上の才能を受け継ぎ、文芸の心得があった人だったのですね。でなければ、最後のお殿様もあれほど気に入ってお側においたりはしなかったでしょう。

拝殿

鰐鳴八幡宮・拝殿

寛政三年(1791)九月六日の棟札があり、現在の建物はこの時に建立(改築)されたとものと考えられています。楼門形式の拝殿に本殿が接続している、今八幡宮などと同じ山口地方独特の造りです。(参照:説明看板)

本殿

鰐鳴八幡宮・社殿(脇から見た図)

明治時代の調査で、貞亨三年(1686)九月に改造されたことがわかったという記録があります。建築様式などからも、この時代のものと考えられているようです。(参照:説明看板)

※本殿は一番後ろの奥まった建物です。

柊社

鰐鳴八幡宮境内矣神社・柊社

境内神社。主祭神は大国主命、少彦名命、蛭子命 。合祀神:市杵島姫命。

もともと柊の地にあったものを、明治末期、政令によって合祀ししました。柊の旧社殿もそのまま現地に残され、遥拝所となっています。(参照:説明看板)

小鯖の板碑(未見)

板碑というのは、板状の石を使って作った塔婆の一種で、コチラの板碑には貞治六年(1367)の日付があり、市内最古のものだそうです。(参照:『大内文化探訪ガイド No.1中世文化の里』)

ミル涙イメージ画像
ミル

文化財となっている板碑は参道入口の鳥居付近にあったはずです。全然気が付かなかったけども。

附・鰐石

鰐石の重ね岩

これが「鰐石」で、鰐はここで神様との別れを惜しみました。⇒ 関連記事:鰐石の重岩

鰐鳴八幡宮(山口市上小鯖)の所在地・行き方について

ご鎮座地 & MAP

ご鎮座地 〒753-0213 山口市上小鯖 583

アクセス

山口駅からタクシー利用。地図をご覧になればわかる通り、最寄り駅から歩くことはとても難しそうです。有名な神社なので、タクシーの運転手さんは必ずご存じのはずです。

参照文献:山口県神社庁様『山口県神社誌』、大内文化探訪会様『大内文化探訪ガイド No.1中世文化の里』、案内看板

鰐鳴八幡宮(山口市上小鯖)について:まとめ & 感想

鰐鳴八幡宮(山口市上小鯖)・まとめ

  1. 平安時代に宇佐八幡宮から勧請された
  2. 宇佐から神様を慕って来た鰐が神様との別れを惜しんで泣いた(鳴いた)という言い伝えから、「鰐鳴八幡宮」と呼ばれる
  3. ご鎮座地から、小鯖八幡宮の別名もある
  4. 本殿と拝殿が山口県指定文化財となっている貴重な建築物である
  5. 春祭りと秋祭りの際に行なわれる小鯖代神楽は無形民俗文化財指定を受けている
  6. 大内氏、毛利氏の崇敬を受けた神社で両氏ゆかりの社宝が多数ある

ガイドさんのお話では、彼岸花がとても綺麗な神社さまだそうです。まだ時期が早すぎる頃のご訪問となってしまったことが残念でした。でも、気の早い花が一輪咲いていましたので、写真をまとめたところに掲載しています。

指定文化財となっていることも頷ける奥ゆかしい拝殿とご本殿です。さらに、神さまとのお別れを惜しんだ鰐の物語が素敵だなと思ったところまではよかったのですが、脳内に浮かんだのは、神さまにおすがりするたくさんのワニたちの映像……。ワニってどんな鳴声なんだろう、とか真剣に考えていました。とても恥ずかしいです。

大内氏・毛利氏の信仰篤い神社さまというだけあって、社宝の数々がすごいです。社宝は普通、非公開なので、こんなものがあるのか、と感心するだけでおわりになってしまうのが悲しいですが。しかし、相良武任ゆかりの社宝が二つもあるというのは偶然なのでしょうか? 鰐鳴八幡宮さまを信仰しておられたか、あるいは、領地がこの付近だったのか(両方かも)。相良さんって今ひとつ好きになれないのですが、大寧寺にはしっかり供養塔ありましたし、地元の方々からは慕われておられるのですかね? どなたか同様、「作られたイメージ」(ほぼ捏造に近いと思われる)が一人歩きしてしまっているのだろうなぁ、と気の毒に思います。常に傍にいて(ここでまた、誤解してしまう人いると思いますが、そういう事実ないですからね。はぁ……)、殿様の欲するところを即座に察し、ぱぱっと仕事をこなしてくれるなくてはならない家臣、そんな人だったというのが真相ではないかと。そういう便利な人に逃げ出されたら殿様的には困るので何度出国しても呼び戻されてはまたこき使われていたんでしょう。

リライトしながら鰐の件と、相良さんの件に気が付いた次第です。駆け足の旅だとどうしても見落としが多くなりますね。結局、もう一度板碑を見に行くことになるであろうと想像されるゆえ、タクシー代金のことを考えたら頭が痛いです。皆さまはそうならないように、事前にどのようないわれのある神社さまであるのか、どんなみどころがあるのか、リサーチをお忘れなく。今頃になって、鰐鳴八幡宮さまに公式ホームページがあることを知った次第でして、拝見すれば、まだまだ新しい発見があるはずです(リライトは永遠に終わらない……)。

鰐鳴八幡宮に参詣された方は、ぜひとも鰐石もご覧ください。どちらが先になってもいいのですが、この組み合わせは大切です。

  • 興味深いご由緒のある奥ゆかしい趣の神社が大好きな方
  • 神社巡りを好むすべての方

オススメ度


(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)

五郎不機嫌イメージ画像
五郎

最古にして唯一の板碑を見落として帰って来るとか、何考えてんだよ?

ミル不機嫌イメージ画像
ミル

君も確か、大はしゃぎしてたよね? 徳山動物園にワニっていたっけ? とか。

五郎不機嫌イメージ画像
五郎

……

於児丸不機嫌イメージ画像
於児丸

だからいつも、ご参詣前に御由緒やみどころを確認するように、って言ってるんだよ。君たちって、1 ミリも進化しないね。

瑠璃光寺五重塔記念撮影
五郎とミルの防芸旅日記

大内氏を紹介するサイト「周防山口館」で一番の人気キャラ(本人談)五郎とその世話係・ミルが、山口市内と広島県の大内氏ゆかりの場所を回った旅日記集大成。要するに、それぞれの関連記事へのリンク集、つまりは目次ページです。

続きを見る

  • この記事を書いた人
ミルアイコン

ミル@周防山口館

大内氏を愛してやまないミルが、ゆかりの地と当主さまたちの魅力をお届けします

【取得資格】
全国通訳案内士、旅行業務取扱管理者
ともに観光庁が認定する国家試験で以下を証明
1.日本の文化、歴史について外国からのお客さまにご案内できる基礎知識と語学力
2.旅行業を営むのに必要な法律、約款、観光地理の知識や実務能力

あなたの旅を素敵にガイド & プランニングできます

※サイトからはお仕事のご依頼は受け付けておりません※

-関連史跡案内
-