紅葉谷:陶荘 鶴ちゃん安芸の旅

ある日のことでございます。
妖精・ミルと「弟分」五郎は、安芸国厳島神社を参拝しました。

ミルは、この曰く因縁のある土地を訪れることを強く拒んだのですが、例によって、我儘勝手で強引な五郎には勝てず、渋々とやってきたのでありました。

むろん、歴史の流れは未来から過去へと遡ることはできても、過去から未来を知ることはできません。
何も知らない五郎にとって、その後の人生においてもそうであったように、
厳島は戦勝祈願に訪れる縁起のいい場所、くらいな理解しかございません。
むろん、幼いながら切れ者ですから、陸海の要衝であり、とんでもないドル箱ならぬ賽銭箱であることは分かっています。

ですが、五郎の脳内情報では、厳島は生涯、大内家の領内でありました。

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ソフトクリームばかり食べるのはおやめなさい。みっともない。口の周りがクリームだらけになっていますよ。
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妖怪に言われたくないよ。だいたい、何なの? その、母上みたいな口調は。クスクス……
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は、母上!? ち、違うよ。せめて、兄さんと言いなさい。
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じーーっ。
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な、何?
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妖怪って、雄雌ないんだろ? お前、女みたいだし……。
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ち、ちょっと、その悩ましい目で見るのはやめなさい。
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うわ、なんだよ、これ……
ぎゃーー何するの!?

子どもらの悲鳴は、そばを通り過ぎるイマドキの民には聞こえない。
住んでいる空間が違うからだ。
それなのに、鹿からは彼らが見えてしまうところ、さすが、「神の使い」である。
(注:このサイトはフィクションです。念のため)

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なんてこった……恥さらしな連中だな……鹿に襲われてるよ……。飢えた鹿の前でソフトクリームなんかを振りかざすからだ。

鹿に追われた「イマドキではない」周防の民は、慌てふためいて隠れ潜む城跡へと戻って行った。

残された、いや、元々彼はそこにいたようだ。
鶴寿丸は奈良公園から仕入れてきた鹿せんべいで鹿をなだめ、
(注:ぜったいに、鹿に食べ物を与えてはいけません。良い子はマネをしないでください)彼の住処がある、紅葉谷に向かった。

そう、ミルと五郎が若山に住んでいるとしたら、彼の「家」はこの紅葉谷の中にあった。その名も「陶荘」。そこは、けっして大内庭園や、一時的に吹き飛ばされている状態の五郎と交わることはない場所だった。
大内庭園で、庭園の主が永遠の若さと美しさに自己陶酔している間に、ほかの時代、ほかの人物の元にも、タイムマシンの連中は続々と到着していた。

富と権力があれば、誰しも、月下郎君のようになりたいと望むのは当然である。
ただ、彼らの「知力」には問題があり、タイムマシン技師の技術と知識にも限界があったので、政弘のように、成功したケースは稀である。

だが、この世には、美貌と風雅では彼に及ばなくとも、知性だけはそこそこ遜色ない者がいくらかは存在した。
鶴寿丸の「友」もそうであり、もうかなり前から、世界遺産の地で、第二の人生を送っている。

宗景同様、なにがしかの恨みを抱いて亡くなったらしい鶴の魂は、永遠に安らぎを得ることができない。
でも、友の粋なはからいで、毎日はそこそこ快適であった。

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てなわけで、あの妖怪には無理そうな安芸国の話は、かわりに鶴ちゃんがしてやるよ。

ところで……。同じような企画を以前にもやろうとしていた。
その時のチャットが残っていたので、何となくもったいなくて「次のページ」に再掲載することとした。

「宮島の風景~隆房と千寿の珍道中連載チャット付き~」というのがそれで、リニューアル前公開日: 2020年4月24日 22:44 ということだ。

最後が同じオチで文字通りの重複な上、リニューアル前の人間関係(権力構造)を知らない人からは意味不明かも。
それでも載せるのは……。やはりそれなりに意味があるから(文字数)。
ちなみに……。元々の企画は、鶴ちゃんが長期滞在中の宮島でこれはと思うショットを紹介していく、というものだった。