海の中にある都~宮島幻想~

第1話
第2話

 2020年3月、合計一週間ばかり宮島に滞在しました。
 夢のような出逢いがありました。

 自然景観も、歴史的事実も、これまで想像していたものが根底から覆されるほどの驚きに満ちていました。

 そんな中でも、ずっと心の奥深くにあった、なんとももどかしい思いだけは変わりませんでした。

 厳島で、私の愛したあの人が死ななかったら……
 もし、そうであったならどうなっていたのか。
 これは歴史の必然だったのか……

 その答えはわかりませんでした。
 恐らく、永久に……

 ただ……本能寺で燃え尽きた織田信長のように
 あの人の大切なものを、敵の手に渡すことだけは
 したくなかった

 オスカー・ワイルドの『サロメ』の耽美な世界が、
 壇ノ浦の藻屑と消えた平家の御霊が
 海の中にある都へと私を誘いました。

 永遠に誰の手にも触れさせたくないたいせつなものを
 海の底にあるという都に運んでいきたい……
 そんな思いです

 墓じまいという言葉を耳にする昨今、
 死後は海への散骨を希望する方もおありとか

 私も宮島の海に入りたい
 そんなことを考えました

 私の空想の中では、
 千寿はたとえどんなかたちであれ、最後は大好きな陶様と、永久の愛を誓います

 これもそんな愛の、ひとつのかたちです

この記事を書いた人:朝吹紫音
ノベライズ:市杵紗江
表紙絵(アイキャッチ):ロン様