尚順出奔

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ここまでくると、用語解説というよりただの下手くそなエンタメ路線だね……。
こんなところまでタイムマシン技師が来ていたとは……。
ところで、タイトルの英訳は検索で適当にやってるんだけど、この場合「家出」したように見えるでしょ?
でも違うんだよなぁ……。
もしいたとして、単純にストーリーだけを追いたい人はどうすればいいんだろうね?
少なくとも、僕に聞かないでね。

 

御所@京都
その日、「御所」に現れた謎の男……。

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これよりメンテナンスを開始する

男は、中庭の外れにある、薄汚れた木戸に近づいて行った。

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そなた、何者だ? そこで何をしておる?
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は? ええと、メンテナンスだが……。(何やら感じの悪い少年だ。あの千寿と同類のようだが、性格は更に悪そうだな。すくなくとも『人たらし』ではない。絡まれたら面倒だ)ええ、少年、細川さん、いや、細川「様」を呼んでくれないか。メンテナンスの許可は得ているんだが
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あやつは四国に下向中だ。当分帰れぬ。それより、余の問いに答えぬか!!
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余? どっかで聞いたようなセリフだが、誰だ?
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無礼者!! 余の顔を見忘れたか!!
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おおお、それそれ、20世紀に流行っていたという『暴×ん坊×軍』ではないか。しかし……君が将軍のはずはあるまい
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ふざけたことを……命が惜しくないようだな。誰かある! この無礼者をつまみ出せ!!
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は? え? おい、ちょっと待ってくれ。まさか……(これが将軍だとかないだろうな? 一応、対目上モードで応対しておくか……)これはとんだご無礼を……。しかし、私も仕事ですので。悪気はなかったのです。これを……

男は小さな紙を取り出すと、義澄に手渡した。
紙には、「セールスマン 山田太郎(仮名)」とある。裏側を見てみると……
「専売特許品:雲外門。お手軽瞬間移動装置販売
骨董品買取:どこよりも高く大量に買い取り
時空を超えた夢、叶えます:未来から欲しい物をお届け。
格安メッセージサービスつき」

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何なのだ、これは?

常なら、すぐさまその意味を教えてくれる傅役の公家は、隣に居なかった。義澄は中庭で一人寂しく蹴鞠で遊んでいるところだったからだ。とんがっていはいるが、どこか気の毒な少年に、お節介焼の鷲塚は少なからず同情した。

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ええと、将軍、様。それで、細川様にはお会いできるのでしょうか? そろそろ作業を始めねば……
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だから、あの者は四国へ……

最後まで言い終わらないうちに、その薄汚れた木戸をくぐって、細川政元が姿を現した。

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おお、お主、来ておったか。待たせたな
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な……どういうことだ? そなた四国へ参っておったのでは? さては、余を欺いたのか
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む、なぜ、将軍がここに……
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答えろ! どうなっておる?
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(面倒な……)おい、そのほう、お答えせぬか
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は? 私が? ああ、その、これは「瞬間移動装置」なるものです。これを……

「山田」本名鷲塚は名刺に続き、パンフレットのような冊子を取り出して、義澄に渡す。何やらカラフルでツルツルした手触りの紙との未知との遭遇に、年頃の少年なりに一瞬だけ目を輝かせた義澄だったが、ここは「将軍」としてのプライドが許さない。すぐにしかめっ面に戻って、冊子を突き返した。

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…。何だこれは。掻い摘んで用件を述べよ
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つまりですね、一言で申し上げれば、これは瞬時でどこにでも移動できるとてつもなく便利なアイテムです。ご覧のように、細川「様」も一瞬にして四国からお戻りに
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……
Name
ああ、その、確かに将軍「様」がお使いになるには、少々見てくれが悪いのですが、その分、性能は抜群です。この怪しげな木戸は……最初に作った実用品が、似たようなボロい木戸だったためでして。ですが、あの時とは違って、現在、登録人数も、登録箇所も上限なしというより進化したものになっております
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……
Name
ここはその……やはり、実際にお試しいただかないと、理解するのは難しいかと。よろしければ、もう一度これを……。お好きな行先をお選びいただければ、私がご案内を

鷲塚は先ほどの冊子をもう一度手渡す。今度は、数ページめくったところが開かれていた。義澄が目を通すと……

№01:土佐細川様御分国
№02:阿波細川様御分国
№03:讃岐細川様御分国
№04:紀伊畠山小倅
№05:越中ニセ幕府
№06:周防大内小僧
№07:京師細川様管領執務室

以下略とあった。

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……。な、なんなのだ、これは!!
Name
む? なぜわしに……
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(まずいな……巻き込まれる)ええ、その、ここは試してみましょう。一度お使いになれば、やみつきになるはずです。どこか行ってみたいところはおありでしょうか?
Name
この、ニセ幕府というのは?

義澄は細川政元が「細川様御分国」などと偉そうに書いていたことに腹を立てたのであったが、どこに行きたいか、と聞かれたら、政元同様見たくもない「従兄」足利義材のニセ幕府以外考えられなかった。勿論、ニセモノを「成敗」するためである。

Name
ああ、そこですか。何もないボロい寺ですが……お望みとあれば参りましょう
Name
何もないボロい寺? ニセモノとはいえ「幕府」を名乗っているのは許しがたい。即刻成敗せよ
Name
(あんなところに行ったら、ますます面倒なことに……)ええ、公方様、今はあのニセモノを成敗するときではありませぬ。先ずは、わたくしめの豪華絢爛な守護館に御成を……
Name
馬鹿者!! いつまであのニセモノをのさばらせておくつもりだ? もはや我慢の限界である
Name
(参ったな。あのニセモノはともかく、ニセモノの配下は和睦を望んでいる。すでに、賄賂も受け取ってきたところであるし……)ニセモノを退治するとなったら、このような見てくれの悪いボロい木戸などからご出陣なさってはなりませぬ。正々堂々諸国の守護どもを率いてご「親征」なさらねば。ここは、お遊びですから、小者のもとへ向かい、脅かしてやりましょう。
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小者とは?
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そうですなぁ……大内は小者とはいえ、大国です。もしも二心あれば、いえ、あやつらはニセモノの一派ですから、もともと信用できませぬが、とても危険です。紀伊の畠山尚順なら人物も国もともに「小粒」です。ここにいたしましょう。ええ、実は我らの間には、「停戦」の盟約がございまして……
Name
なんだと? ニセモノ一派はすべて討伐対象ではないか。なぜ、余に断りもなく「停戦」など?
Name
公方様御自ら仰せになったではありませぬか。政はすべてわたくしめにお任せ下さると。まあ、あんな小僧を倒すことなど造作もないですが、物事にはそれなりに順序という物がございましてな。まあ、しばらくお待ちを。現在、あの男には「史書の編纂」をやらせておりまして……
Name
史書の編纂?
Name
左様です。我が足利一門の繁栄の歴史について、あの者にまとめさせておりますので
Name
あのニセモノにそのような才があるのか?
Name
ええ、その、ホンモノに比べれば、マシ、とでも申しましょうか……

さて、その頃、紀伊の畠山尚順は……
堆く積まれた本の山に埋もれつつ、例によって草臥れ果てて眠り込んでいた。もう今となっては、この様子を見て一々驚く澪ではなかったが、その日は大慌てで部屋に飛び込んできた。

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兄上、大変だよ~‼ 早く起きて‼
Name
ふむむ……中先代の乱……
Name
そんなわけわからんのどうでもいいから、目の前のことを考えてくんない?
Name
目の前( ゚ ρ ゚ )ボー
Name
義豊が攻めて来たんだよ‼
Name
はぁ? しかし、あの者とは休戦が……
Name
見てよ、これ

澪に手渡された書状を見ると……

「俺はししょへんさんとやらに関係ねぇからな。停戦した覚えもねぇ。てめぇが眠りこけてんのが悪いんであって、俺がずるしたわけでもねぇわけで……」読むに堪えない、無教養な文章が続く。

Name
困ったな。皆、書物を読むのに精一杯で……
Name
つーか、全員本の山に埋もれて寝てるだけじゃん。だから「眠りこけて」とか書かれてんだよ

二人が話していると、執務室の扉が開き、ガラの悪そうな若者が入って来た。なんと、畠山義豊その人である……

Name
よお、取り込み中のようだなぁ
Name
な、お前、どこから……
Name
そんな……もう館が落ちて、ここだけになってるんじゃ?
Name
何? おのれ、大悪人め、やはり我らを騙したのだな。こんな書物を持ち込んで、停戦するなどと調子のいいことを言っていたのは、このためだったのか。我らを油断させ……
Name
おい、落ち着けっての
Name
は?
Name
ちょっと脅かしてみただけじゃねぇか。俺には俺の壮大な計画があんのよ
Name
なんだと?
Name
ほんでさ、物は相談なんだがなぁ、お前のとこにある南蛮人のお宝、俺に譲ってくんないか? そしたら、お前の言う事聞いて、暫く停戦するからさ
Name
宝? 何のことを言っているのか知らんが、あやつらが置いて行ったものは見ての通りの書物ばかりだが?
Name
そうそう、それよ。じつはな、とんでもないお宝本が紛れ込んじまってんのよ
Name
話が見えない

義豊は本の山を調べていたが、そのうち何冊かを探しあてたようだった。

Name
おお、これこれ。これな、超レアなんだってさ。未だにオークションサイトで高値で取引されてんのよ。ま、あれらの未来人を通して売りさばくんで、次にあいつらが来るまで金は入らないんだけどな
Name
さらに話が見えない

義豊は懐中からタブレット端末を取り出すと、何やら画面をタップしていたが、日焼けした顔はお宝を手に入れた喜びで満面の笑みになっていた。

Name
おっしゃーー‼! これでまた一儲けしてやるぜ。うしし。ほんじゃ、あばよ。邪魔したな
Name
な、なんなんだ? 今のは……
Name
何だか分からないけど、馬鹿は放っておくしかないよ。ただ……兄上が「お宝」とやらを見落としたことは確かだよね。館の雨漏りも直すが金がないのに……こんな金にならない「編纂」とか、やめたら? そもそも……兄上には向いていないよ
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な、何?
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兄上ってさ、Twitterの診断マーカーでも「残念な人」って出てたし。マジ残念なんだよ。武勇は義豊の系統に敵わないし、政務は細川政元に敵わないし。しかも、ルックスも、鶴に及ばないのは仕方ないとしても、あの、亀とやらにも負けてるしさ

畠山尚順の決して「低くない」プライドはズタズタに引き裂かれた。
翌日、澪は執務室に、次のような置手紙を見つけた。

「暫し身を隠す」

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まずい……言い過ぎたかも……

内衆らは、その日も本に埋もれた主を叩き起こしに来たが、尚順の姿はどこにもなく、ただ、泣き喚く澪と置手紙が残されていたのだった……
令和二年三月一日のことである

リニューアル前公開日: 2020年3月1日 02:56

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