父の代からの「お家騒動」を引き継ぎ、畠山義豊と戦い続けている尚順は、日々多忙である。にもかかわらず、今は戦もほったらかしで、借り暮らしの広城・守護館で本の山に埋もれていた。つい先日、周防の大内義興から、南蛮渡り(?)のルーペなるものを借り、更に、怪しげな南蛮人から「型落ちスマホ」なるものを格安で買い取って何やら作業中である。
ジョニー・吉田ジョニー・吉田

おい、どんだけ説明したら分るんだよ? カメラで撮影し、ファイルを編集して……馬鹿なのか、お前? ったく、金にもならない、こんなボロ城に飛ばされた俺の身にもなれってんだよ

畠山尚順畠山尚順

無礼な男だな。私を誰だと思っている? その口のきき方はなんだ? 身分をわきまえよ

ジョニー・吉田ジョニー・吉田

OK、分ったっての。あんたは、えらーい将軍様の一門なんだろ? だったら聞くけど、なんでこんなボロ屋に籠もってんだよ? 俺、歴史とかどうでも良いから。壺とか、茶碗とかないのか?

畠山尚順畠山尚順

世が世なら……父上の管領屋敷で掃いて捨てるほどの名品に囲まれておったものを……

ジョニー・吉田ジョニー・吉田

ウザ、そういうお涙頂戴とか、俺一番苦手。金にならないしな。しかし、あれだよな、お前のところにある、これらの本、俺が見たところ、全部平成時代のものなんだが……。ここ、一応、室町時代だよな? なんで、こんなもんがここにあるんだ? (他にも密売人が来てたとしか思えねぇ。俺なら、こんな時代、来ないけどな。ひぃーー、なんで座標打ち間違えちまったんだか。応仁の乱で京都は全部焼けちまったんだとさ。どうでもいいんだが、誰が何のために、こんな『紙』の書物を中世の人間に売っているのかも分らん)

細川政元細川政元

ふふふ、ちと、邪魔するぞ。作業は進んでおるかの?

畠山尚順畠山尚順

くっ、またお前か。ここへは二度と来るなと……

ジョニー・吉田ジョニー・吉田

お、なんか、金の匂い。あんた、金になる物持ってねぇか?

細川政元細川政元

な、なんだ、この者は? 怪しげな装束だが……言葉は通じるようだ。異国の者ではないような……。し、しかし、今の口のききかたは何なのだ? このわしを誰だと思っておる?

ジョニー・吉田ジョニー・吉田

What's your name?

細川政元細川政元

な、何?

畠山尚順畠山尚順

無駄だ。その男、「みらい」とかいう場所から来たようだが、話の半分も通じない。それより、貴様の用件を聞こう

細川政元細川政元

(限りなく無礼な……親の仇であろうがなんであろうが、わしは『目上』だぞ、『目上』。まあ、良いわ。面倒な作業はこのお人好しに全部押しつけて、わしは楽して良いとこ取りすれば良いのだからな)過日、任せた件だが、どうなっておる? すこしは調べが進んだのか?

ジョニー・吉田ジョニー・吉田

ま、期待するだけ、無駄。こちら様は、本の山に埋もれてうたた寝してるだけ。あんたらの作業なんかどうだって良いんだけどよ、俺は金目のものが欲しいんだよ。金目の物が!! 壺とか、茶碗とか、そういうのだ。おい、お前ら、金閣寺って知ってるだろう? 俺、元・足利家専属のクライアントだったんだぜ。あんときは、金目の物が掴み放題だったのになぁ……なんで、こんな不景気になっちまったんだ? 知ってんだろ? 足利義満、ってさ。俺、そいつに何度も会ってんのよ。で、今の将軍て誰なんだ? ま、聞いたって俺、歴史なんか関心ねぇけどな。

尚順と政元は同時に叫んだ
畠山尚順畠山尚順

無礼者! 現在の将軍様は、義材様に決まっておろうが

細川政元細川政元

そのほう、命が惜しくないのか。義澄様にきまっておろうが(実際には、わしが『半将軍』だったりするがな)

ジョニー・吉田ジョニー・吉田

なんで、二人して違う名前喚いてんだ? 訳分らん。儲かりそうにないから消えるぜ

細川政元細川政元

これ、待たぬか。おぬし、何やらいう国から来たとか申しておったな。わしが特別に将軍様に拝謁できるよう、手配してやっても良いのだが……それに、金目の物とやらも、我が屋敷には腐るほどある

ジョニー・吉田ジョニー・吉田

マジ? じゃ、今すぐ手配してくれよ。俺も暇じゃないんでね。あんた、何者? おお、将軍の執事とか、そういうのだろ。賄賂取り放題な。いたよ、いたいた。細川なんたらじゃね?

細川政元細川政元

(む……なにゆえ、わしの名を……おお、そうか、この者の国にまで、わしの名は知られている、そういうことだな。まあ、当然であろう)

畠山尚順畠山尚順

すまぬが、間もなく規定の文字数に到達する……またしても、分かり易い解説とやらを全くしないまま回が終わってしまうぞ

ジョニー・吉田ジョニー・吉田

(話がまるで見えねぇが、こっちの若いほうより、頭に何にも被ってない野郎のほうが金になりそうだな)

細川政元細川政元

偉そうに仕切るでないわ。おぬしのような小僧には百年早い。何々、前回は、「管領とは」。ふむ、では、今回は「守護」とは、だ。守護にも色々あるのだが、おぬしに説明できるか?

畠山尚順畠山尚順

色々、とは?

細川政元細川政元

思った通り、何も学んではおらぬようだな……。ええ、つまりは、だ。わしのような、由緒正しき家柄で、かつ領国も多い者。おぬしのように、家柄は知らんが(そこはお前が調べるはずであったろうが)、そこそこで、しかし、領国が狭い者。将軍様のお膝元、つまり、京に近い者、遠い者、などなど、だ

畠山尚順畠山尚順

アホらしい。そのくらい、誰でも分ることではないか……(←実はよく知らない)

細川政元細川政元

思った通り、何も学んではおらぬようだな……。ええ、つまりは、だ。わしのような、由緒正しき家柄で、かつ領国も多い者。おぬしのように、家柄は知らんが(そこはお前が調べるはずであったろうが)、そこそこで、しかし、領国が狭い者。将軍様のお膝元、つまり、京に近い者、遠い者、などなど、だ
 まとめておこう。まずは、足利家庶流一門の守護、譜代の家臣の守護、外様の守護という分類。つぎに、多国を統治下に置いている守護、一国だけの守護、そしてとある国の半分だけ(半国というが)の守護という分類。更に、京から遠いか、近いか、という分類。
 一門であるか否かについての説明は要らぬであろう。譜代の家臣と外様も大丈夫だな? 南北朝の動乱の時代、我らに降った者らが外様であるぞ。本来であれば、全ての国を我々一門で治めていきたいところだが、そうもいかぬからな。取り敢えず、臣下に降り、相応の働きをした在地の官人などは守護に取り立てられておる。
 そして、ここが、肝心であるのだが、その領国の配分だ。そもそも、我らのように高貴な家柄だと、将軍様のお傍にてお仕えするご用があるため、皆、京に屋敷を構えておる。ゆえに、領国の経営は家臣任せとなる。この時、その家臣たる人物が、身内の庶流一門だったりするのが一番理想的なのだ。そしてまた、元々領国がまとまっており、なおかつ、京に近ければ言うことはない。この全てを兼ね備えた経営を行っているのが、我らが細川家だ!

畠山尚順畠山尚順

(しらーー)

ジョニー・吉田ジョニー・吉田

(自己アピール半端ねぇ……)

細川政元細川政元

では、ともに参ろう、異国の民よ。「金のある」我が屋敷へ……

畠山尚順畠山尚順

 い、今のくだらぬ説明で理解できた方はおられるであろうか……。
 つまりは、あまり認めたくはないが、我が家のように、領国が越中と紀伊などに分かれている場合は最悪なのだ。まあ、お家そのものが分裂しているから、まとまれば事情は変わるのだが……現状はそうなっている。ただし、周知の通り、ここでは義豊と死闘を繰り広げておるゆえ、我が義材様のおられる越中に出仕する暇はない。
 それに、父上が遺してくれた領国でありながら、越中のことは家臣の神保長誠に任せきりだ。まあ、信頼できる忠臣なので問題ないが。そう、先程、政元が偉そうに言っていたように、細川家のように、元々畿内に領国があれば、在京して将軍様にお仕えせねばならぬゆえ国が留守になる、という心配もない。さらに……あやつらは、京に近い場所に多くの領国を持っており、それぞれ、庶流の一門が守護代として経営にあたっているから、まとまりも良いのだ。
 まあ、同じような例として、大内殿などもそうなのだが、国が周防、長門と九州の一部にまとまっていて治めやすく、更に、陶殿のような庶流一門が管理を任されている国もある。ただし、京から遠いため、在京は大変だな。もっとも、将軍様も、京から遠い者には、在京を強制しておられぬこともあったから、遠隔地で好き勝手しておるのよ。
 また、かつての山名宗全なども、まあ、大量に領国があって、しかもそれぞれを、すべて庶流の一門に治めさせていたから、一致団結した一大勢力であったわけだ。
 それに比べて我らは……。いや、その……大内や山名は外様だ。我らとは「格」が違う。念のため。文字数オーバーしたが、変な南蛮人のせいだ。この辺で終了するぞ。