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浄福寺(山口市嘉川)

2023年12月6日

浄福寺・案内看板

山口県山口市嘉川の浄福寺とは?

大宝元年(701)に、役小角が堂宇を建てたのが起源とされ、元は長福寺といいました。つまり奈良時代から続く、由緒正しき寺院さまです。

その後、一時期衰頽してしまっていたのを、応永年間に日誓法印という方が再興なさいました。その際には、熊野三社権現を勧請したそうです。大内氏の祈願所となり、大内義隆が寺院の再建をしたりしています。

江戸時代に、寺号が正福寺となりました。その後、明治時代に浄誓寺と合併したため、「浄福寺」と改められて現在に至ります。境内には熊野神社があり、神社のある山は「浄福寺古墳」と呼ばれる古墳です。寺院、神社、古墳と三種類のものが同時にお参り & 見学できます。

浄福寺・基本情報

所在地  〒754-0897 山口市嘉川 265
山号・寺号・本尊 青龍山・浄福寺
宗派 高野山真言宗
ホームページ http://s-joufukuji.jp/

浄福寺・歴史

『山口県寺院沿革史』にはおよそつぎのようなことが書かれております。

「往古、大宝元年(701)。役小角が入唐した折、この地に来た時霊夢を授かり、一宇を創建した(本堂西方へ行くこと丈余に小山を築いて、仏舎利、七宝等を宝瓶に納め、土中に埋めて如意山と号した。爾来、この地に住むこと歳余)。

応仁(※原文のママ。『応永』の誤植)年間に至り、三百五十余年にして堂宇は廃頽してしまった。日誓という僧侶は、このことを深く嘆いて祈願をした(熊野三社の神木なぎの一枝を折取って植えたとか)。

その後、物変わり星移り、天正年間となって、さらに本堂を再度修築、再建して中興するに至った。享保元年に寺号を替えるように仰せつかり、正福寺と改めた。その後、明治初年に廃寺と合併して浄福寺と改めたという。

寺宝 本尊阿弥陀如来及び両脇侍不動、愛染は弘法大師の作であるという。薬師如来一躰、伝教大師の作といい、二十年毎の開帳である。

本堂、庫裏、客殿、経蔵、観音堂、薬師堂」

え!? これしか書いてないの? と思いますが、残念ながら……です。しかし、浄福寺さまには公式のホームページがございますので、そちらを拝見すればご由緒などはすべてわかります。

ホームページを拝見して確認した結果、上記『沿革史』の記述もおおよそ誤りはないので、そのまま採用します。ただし、寺宝と建物についての説明は、時代がやや古いご本なので、現在もそのままかどうかはわかりません。また、役小角についての部分は、公式アナウンスにない逸話が書いてあります(如意山云々のところ)。

やはり寺院さま公式のご案内に勝るものはないので、直接ご覧くださいませ(となると、このサイトの存在意義はないって、ことになるけども……)。

寺院さま公式ホームページにも、阿弥陀如来、愛染明王、不動明王、薬師如来の像が現存することは明記されておりますが、弘法大師、伝教大師の御作であるとの記述はありません。なお、『沿革史』には記されていないことを補足しておくと、創建当時のお名前は「青冷山長福寺成就院」。また、浄福寺さまと合併された寺院さまのお名前は「浄誓寺」です。二つの寺院から一文字ずつとって、新しい寺号となさったのですね。

また、ご本堂に安置されている仏像がとても貴重なものであるとのご説明もありました。

紅頗梨色阿弥陀如来を安置している。紅頗梨色阿弥陀如来は密教の阿弥陀如来であるが、我国に現存する像は他に例が無く、大変貴重な仏像である。

出典:浄福寺さまホームページ http://s-joufukuji.jp/about/

なお、大内氏との関係についてですが、『大内文化研究要覧』によれば、応永年間の再興以降、祈願所となっていたようです。大内義隆が伽藍を再建したともいわれています。

浄福寺・みどころ

嘉川の寺社仏閣さまには、嘉川自治連合さまが設置なさったご案内看板があります。アイキャッチにはいっているものがそれです。これを拝見すれば、どこに何があり、みどころは何であるのかが、バッチリ分ります。基本はこの案内版をナビゲーションとして、あますところなくご参拝できます。

にもかかわらず、ご本堂のお写真を撮り忘れておりました……。再訪いたします(後述)。

お大師さま尊像

浄福寺・弘法大師像

入ってすぐのところに弘法大師さまがおられました。おお、真言宗寺院さまだ、ってなりますね。

足尾大権現

浄福寺・足尾大権現

読んで字のごとく、足に関するお悩みごとを叶えてくださるお地蔵さまです。なるほど、わらじが大量に奉納されています。

地蔵堂

浄福寺・地蔵堂

お地蔵さまって、本当にさまざまな方から信仰されておられますよね。宗派を問わず、どこの寺院さまにも、はては、街角などにも六地蔵さまが佇んでいたり。信者の方々が大量にお供えをしておられ、手編みのセーターなどを着せかけて差し上げている例も多く見られます。

こちらのお地蔵さまは「北向地蔵」さまと「水子地蔵」さまとなります。ちょっと分りづらいですが、右手隅っこに辛うじてお姿が見えているのは家畜ペット供養塔脇のお地蔵さまです。

秋葉神社と天神社

浄福寺・秋葉神社と天神社

こちらのお社なのですが……。いずれかが秋葉神社、いずれかが天神社であるはずです。しかし、区別がつきませんでした。ごめんなさい。ご住職にお伺いすればよかった……。

熊野権現

浄福寺・熊野権現

秋葉神社・天神社の中央にある鳥居から階段を上っていったところにございます。日誓法印さまが再興した際に、熊野三社権現を勧請したというので、その時の熊野権現さまでしょうか。寺院の再興に神社を勧請するとか、まさに神仏習合ですね。そもそも熊野権現が神社なのか寺院なのかわからない様相だったようですし。ただ、寺院は勧請できないので、神さま(神社)だったことは間違いないですね。

観音堂

浄福寺・観音堂

浄福寺さま(当時は正福寺)と浄誓寺さまとが合併された時、浄誓寺さまから移築されてきた元本堂です。このようにして、きちんと受け継がれているのですね。

宝篋印塔

浄福寺・宝篋印塔

宝篋印塔は案内看板を拝見する限りでは三つあるようです。これがそのうちのどれなのか、どのような謂れがあるものなのかはわかりませんでした。

山門

浄福寺・鐘楼

立派な楼門です。一見、鐘楼門になっているのかな、と思いましたが、こちらから鐘は見えません。ほかにも写真がないか探しましたが見付けられず。これも次回の宿題ですね。

お願い地蔵

浄福寺・お地蔵さま

石碑に書かれた「一つおねがいしてみては」という文言がとても気になりました。他県で延命地蔵さまにお参りした際、ご一緒したガイドさんが、「ひとつだけ願いを叶えてくれる」と仰っておられたのを思い出したんです。欲張ってあれもこれもお願いしたら叶わないけど、ひとつだけなら叶えてくださるのか、とその時は思ったのですが、よく考えてみたら、普通に寺社さまでお願いするときも、お願い事はたいていひとつですよね。

HPを拝見したら、なんとこのお地蔵さま、「大自然によって出来た自然の石仏」なのだそうです。

浄福寺(山口市嘉川)の所在地・行き方について

所在地 & MAP 

所在地 〒754-0897 山口県山口市嘉川 265

アクセス

最寄り駅は、かなり悩みますね。嘉川にある寺院さまということからも、上嘉川駅がいいのかなと思われますが、宇部線なので、乗り換えが必要となります。なんならば、新山口駅から歩いても地図を見る限りでは距離的に大差ないように思えます……。そんなわけで、鉄道の駅から歩くことはかなり難しいように思えます。今回は、山口市内(いわゆる山口駅のある市内)からタクシーを使いました。

参考文献:浄福寺さま HP、『大内文化研究要覧』、『山口県寺院沿革史』

浄福寺(山口市嘉川)について:まとめ & 感想

浄福寺(山口市嘉川)・まとめ

  1. 奈良時代の大宝元年(701)、役小角によって創建されたと伝えられる
  2. 永正年間に至り、堂宇が衰頽してしまっていたのを、日誓法印という人が再興した。その際、熊野三社権現を勧請したという
  3. 大内氏の祈願所となり、大内義隆が再建したとも伝わる
  4. 元の寺号は長福寺といったが、江戸時代に正福寺と改められた
  5. 明治時代になり、正「福」寺は、廃寺となった「浄」誓寺と合併。浄福寺となった
  6. 境内には元浄誓寺の本堂を移した観音堂、熊野権現が勧請された時の名残と思われる熊野神社などもある
  7. 熊野神社のある山は「浄福寺古墳」と呼ばれる古墳でもある
  8. 本堂に安置された紅頗梨色阿弥陀如来は、現存するものとしては国内唯一という、たいへんに貴重なものとなる

とても明るく、清潔感溢れる寺院さまです。地元の皆さまに大切にされていることが一目でわかります。神仏習合していた時代に熊野三社権現を勧請して再興されたという歴史もあり、今も境内の小山に熊野神社があります。でもって、この熊野神社がある山は、なんと浄福寺古墳と呼ばれる「古墳」でもあります。寺院さま、貴重な仏さまの像、神社さま、加えて古墳までもあるという、一箇所であれもこれも満喫できる稀有な寺院さまです。

車を使ってご参詣しているとたびたびやってしまうのが、あ、車の中にお財布を忘れてきてしまった……。ということ。先を急ぐタクシー旅の場合、その頻度は倍増です。浄福寺さまでもそれをやってしまい、しまった、お財布はタクシーの中だ……となって、取りに戻ろうとしたところ、何やら可愛らしいワンちゃんが纏わり付いて参りました。んんん? と思っておりましたら、すみませんの声に振り返ると、若い男性のお姿が。ああ、ワンちゃんを連れてお参りにいらした方に違いない、と思いました。すらりとしたイケメン男性ながら服装はラフで、ちょうどご近所の方が日課のワンちゃんのお散歩とともに、信仰している寺院さまに参詣なさっておられる、というように見えてしまったのです。すると、奥様と思しき若い女性も現われて、ワンちゃんを連れて中に入って行かれました……。そうです。ご住職だったのです。

なんとも無礼な勘違いをしてしまった上、本堂にお参りするのにお財布がないことに気付いて、戻ろうとしていたところ。なんだか、お賽銭スルーをしようとしていたのに、ご住職と鉢合わせしてしまったがゆえに、忘れたと言い訳してお金を取りに戻るみたいに見えるじゃないか、と恥ずかしくて穴があったら入りたくなりました。でも、事実、本当に忘れてしまっていたので、お詫びして財布を用意し、無事にお参りすることができました。

ワンちゃんのご縁で、短い時間でしたが、ご住職とお話をすることができました。日ごろからとても気になっていた、観光客が信徒でもない寺院さまに入っていき、まるで観光資源であるかのように見学することは NG なのか、ということをお伺いしてみました。宗派にかかわらず、寺院さまにお参りすることは問題ないし、浄福寺さまに限っては写真撮影などもまったく禁じてはおられないとのこと。ただし、ご住職のお人柄も寺院さまそれぞれですし、写真撮影などについては、あまり快く思わない寺院さまもあることは胸に刻む必要があろうかと思います(これはご住職のお言葉ではなく執筆者曰くです)。

ほかにも長らく悩んでいたあれこれをお伺いし、何やらちょっとしたご講話を頂いた感じになり、何とも得難い体験となりました。帰宅後、これを書くために Googlemap を見ていたら、浄福寺さまには、素敵なホームページがあることがわかりました。何となくですが、ご住職のご年齢(おいくつであらせられるかなどはわかりませんけれど、お姿を拝見した雰囲気から)やお人柄から考えて、恐らくホームページは存在するであろうと予想していたのですが、やはりでした。

一般に、寺社仏閣さまのホームページは、その由来沿革や境内案内、アクセス方法などを分りやすく書いてくださっておられ、いずれもいずれも、その寺社さまならではの工夫が凝らされており、甲乙つけがたいものです。ご住職、ご神職ご本人が IT に精通されておられると、サイト製作などお手の物だったりなさいます。けれども、そうではない場合、その道のプロにお願いする、パソコンに詳しい知り合いにお手伝いいただく、などもあるかもしれません。そもそも、そこまでしてホームページを準備する必要性はないと考えており、実際、ホームページなど存在しない寺社さまも少なくありません。ですけど、ホームページがある寺社さまですと、参詣前後に熟読して、参詣プランを立てたり、帰宅後、何が何やら分らなくなった写真が何なのか確認したりと、大変お世話になることが多いです。でも、たいていはそこどまりです。

けれども、たまに、とても素敵なホームページを展開されておられる寺社さまがあると、ホームページのファンになってしまって、密かにブックマークとかあります。浄福寺さまのホームページは、とても洗練されていることが特徴です。もちろん、御由緒のご案内なども簡潔明瞭で非常にわかりやすいです。何となく、アーティストの香りがするなぁと思いつつ拝見しておりましたら、なんと、ご住職はミュージシャンでもあられ、アルバムまで出しておられました!

ホームページについては、拝見すれば一目でその美しさがわかりますので、これ以上の陳腐な説明文は省略します。御由緒の解説などのほかに、ブログも開設されており、拝読すればお人柄はすぐにわかります。ブログタイトルにあるお写真を見て、あああ、この素敵な男性どなた? となってしまう女性読者は少なくないと思いますが、ご住職ご本人ですので、無礼な勘違い NG です。お勤め中のお姿とは別人のように見えますが、アーティストとしてのお姿を載せておられるためです。もちろん、とてもご親切な方で、どなたでも受け入れて、優しく導いてくださいます。

あああ、しかし、かなりびっくりしてしまいました……。緊張したので、ご本堂のお写真を撮り忘れてしまいました。ちなみに、ホームページにはワンちゃんも載っていますよ(20231127 現在)♪

こんな方におすすめ

  • 寺院巡りが好きなすべての方に
  • 由緒ある古寺に惹かれる方に(役小角の時代から続いています)

オススメ度


(オススメ度の基準についてはコチラをご覧くださいませ)

五郎通常イメージ画像
五郎

ミルが ★ をひとつ + したのは、ご住職がイケメンだったからだな。恥ずかしいから理由書いてないけど。書き込んじゃおうかな?

ミル不機嫌イメージ画像
ミル

ご住職が素敵な方だったことは事実だけど、それはイケメンとか、そういう意味ではないから。

畠山義豊イメージ画像
次郎

でもあれだよね、最近、イケメンに弱い女たちの心理につけこんで、大寺院が喫茶店やってたりする例あるじゃん?

新介通常イメージ画像
新介

いけめんというのがどういう意味なのかはわからないけど、人当たりがいい方たちを集めて茶館を開き、悩み事の相談などに乗ってくれる場所だと思うよ。特に女性だけのために開かれているわけではないかと。「つけこんで」などという言い方は正しくないね。

於児丸笑顔イメージ画像
於児丸

新介さま、こんな無礼な輩は放って置いて、浄福寺さまの古墳を見に行きましょう。熊野権現がある山一帯が古墳ですけど、彼らの写真には、古墳の全体像がわかるものがありません。遠くから見なくては。

瑠璃光寺五重塔記念撮影
五郎とミルの防芸旅日記

大内氏を紹介するサイト「周防山口館」で一番の人気キャラ(本人談)五郎とその世話係・ミルが、山口市内と広島県の大内氏ゆかりの場所を回った旅日記集大成。要するに、それぞれの関連記事へのリンク集、つまりは目次ページです。

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ミル@周防山口館

大内氏を愛してやまないミルが、ゆかりの地と当主さまたちの魅力をお届けします

【取得資格】
全国通訳案内士、旅行業務取扱管理者
ともに観光庁が認定する国家試験で以下を証明
1.日本の文化、歴史について外国からのお客さまにご案内できる基礎知識と語学力
2.旅行業を営むのに必要な法律、約款、観光地理の知識や実務能力

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