第八十一話:木戸の秘密と牢屋の鍵

府内には雲外門があり、他国と繋がっている。
千寿はこの重要機密を知ってしまった。すべては高祖帯刀の兄・隆久から聞いたのであり、真偽の程は分らない。もしかしたら、何かの「罠」である可能性も……。だが、千寿には、あんな弟でも優しく思いやっていた隆久にそのような芸当が出来るとは思えなかった。
(あれ全部が『演技』だとすれば、弟を上回るSランクだよ)
そうだ、ゲーム機で確認すればいいだけではないか。千寿は鷲塚から、今後はゲーム機に頼らずに……と言われていたことなどすっかり忘れた。
(髙祖隆久……なんだこれ? あまりにも『普通』だよ……)
千寿は隆久が、すべての能力値に於いて「上の下」平均値Aであることを確認した。ところが、ついでに敷山家全体の能力値を久しぶりに再確認してみると、何ともはや。この家の戦馬鹿ぶりのすさまじさにあきれてものも言えなくなった……。
要するに、当主の隆邦、そして、その妹の女武者多江から始まって、一門と捏造された家臣すべてが「武勇」と「統率」だけに優れた連中。それも、「統率」よりは「武勇」だから、当主というより、配下の大将くらいが関の山といったレベル。ただし、それは兄の昌興のような別の意味での「化け物」と比べるから霞むのであって、そこらの「捏造されてはいない」人物は彼らの半分の統率力すらない。だから、普通に「大」国の主をやってかまわない。
しかし、問題なのは、彼らの「知略」と「政治力」の数値があまりにも低いことだった。国を統治するためには外交だの、貿易だのあれこれの戦以外のことも必要。どれだけ武勇が高くとも、それだけで領国の開発を進めるのは難しい。そりゃまあ、馬鹿力で大岩を押しのけて荒れ地を開墾できるではないか、と言えなくもないが。しかし、彼らは「統治者」だ。国力もこれだけデカいのであるから、すでに当主自ら鋤や鍬を使う身分ではあるまい。そこで必要なのが、相良武任のような連中となる。
千寿の次兄・昌典は、政治力がずば抜けて高いが、武勇はからきしだ。しかし、何も常に当主自ら戦場に立っている必要はないので、それこそ、戦馬鹿を大量に囲い込んでコマのように扱えばいいのだ。
戦馬鹿と政治力オンリー、どちらが当主向きかは時代が決める。このような戦国乱世に、彼らの「元」主のような公家の宴会しかできない人物は自然淘汰される。それでも、隆房のような人物を上手く扱い、戦は戦できちんと出来るならかまわない。ただし、一般的に見て、どうやらあれらの「雅」な連中というのは、隆房のような武人一般をすべて「戦馬鹿」と見下す傾向がある。こうなると、国の滅亡はすぐそこだ。
つまり……。イマドキの当主により相応しいのはどちらか、と問われれば「戦馬鹿」のほうに軍配が上がるであろう。しかし! 敷山家は別だ。ここまで「政治力ゼロ」ではとても世渡りできまい。
現在、周辺諸国を滅ぼして、それらの元領主を多数召し抱えるようになったから、それなりに人数はいる。しかし、取り立てて見所のある連中もいないので、やはり人材が不足していた。つまり、髙祖隆久と帯刀兄弟の二人が、この戦馬鹿集団の外交と政治をすべて担当していたことになる。この、すべてにおいて「上の下」という隆久の能力値は政治能力にもかかるから、この家におけるその方面はすべてこの男におんぶに抱っこだったのだろう。帯刀も隆邦らに比べればマシとはいえ、こと政治能力値については「人並み」だった。それでもこの家では「優秀」となる。