第五十七話:以心伝心

四国の小城を潰し続けていた隆房と千寿は、ゲーム機の「故障」のせいで、瞬く間に大勢力となってしまった敷山家に驚いていた。千寿は勿論、何度も敷山家の城を破壊し尽くした。しかし、不思議なことに、壊しても壊しても、それはいつの間にか元の巨城に戻ってしまうのである。

豊後の昌典の城とて同じであった。いくら仲が悪いと言っても身内。城を落とされてはかなわないから、きちんと捏造して巨大な城を築いておいた。勿論、機械が故障せず、敷山家が無双するような奇怪なことが起きなければそのままのつもりであった。しかし、敵があまりに強大化していたから、大慌てで防御を強化したのだ。

勿論、いきなり城が建て替われば、中にいたものがパニックになることは想像できたが、そんなことに配慮する余裕はない。しかし、何という事か、きちんと捏造したはずの城は、翌朝目が覚めたら、目茶苦茶に破壊されていたのである。噂では大地震が起こったとのことであった……。

これはただの故障ではない、千寿はそういう結論に達した。恐らくは、山田からゲーム機をもらったものが他にもいるのだ!

信じていた山田に裏切られ、千寿は悲しくてならない。あの男はしょせん「セールスマン」。目当ては、お宝だ。恐らく、敷山家の誰かにもゲーム機を渡し、それと引き換えにお宝を山と手に入れたに違いない。

それどころか、敷山家の連中に、千寿がゲーム機を持っていることを教えた。だから、敷山家は刺客を放ち、千寿からゲーム機を奪おうとしている。

だが、あの山田を思い出すと、そのような悪人には見えなかった。少なくとも、千寿のために必死でゲーム機についてのレクチャーをし、貴重な裏技まで教えてくれたではないか。千寿は色々調べてみたが、どうやら、敷山家の誰かは、「人材登用」だの、「時には敵を助けてやる」だの、そういうことまでは知らないようだ。ただ、相手の城を破壊し、自分の城を巨大化する捏造しかやっていない。

そして、今、千寿が酷く悩んでいることは、隆房の独立に関することであった。隆房が天下人となれるように力を貸す、そう宣言したし、手伝う決心はついている。だが、このまま敷山家の連中に、兄の昌興がいいようにされるのを黙ってみているわけにはいかない。順序としては、まず邪魔な敷山家を排除する。申し訳ないが、隆房の事はそれからだ。

しかし、もしも連中が本当に同じ機械を持っているとしたら、厄介である。互いに天変地異を起こし合い、一夜城を建てまくっていたら、それこそ歴史は目茶苦茶になってしまうし、恐らく両者の争いには永遠に決着がつかない。

だからこそ敵は千寿のゲーム機を盗み出そうとしたのだ。ならば、こちらも相手のゲーム機を取り上げねばならない。だが、一体、どこの誰が管理しているのだろうか?

やはり、これは千寿には解決できない大問題である。多分、力を貸すことが出来るとしたら、山田以外ありえない。しかし、あの男は1000年先の未来にいるわけだし、連絡の取りようもない。

(……テレパシー)

千寿は心の中で言った。以心伝心のようなものだろうか? 毎日毎日、山田が来てくれることを祈り続けた。千寿には時間がない。

昌興が言っていた「来年のこの日この時までに戻らなければ……」という期限が迫っていたのだ。例によって、四国の地から昌興の現在地まで数時間というわけにはいかぬから、兄の元に向かうならそろそろ出立しなくてはならない。

そうでないのなら、このまま一生隆房の元で、その覇業を助けることになる。それも構わないと思ったが、そうしたら、父や兄は敷山家に敗れ、命すら危ういかもしれないのだ。

(山田、早く助けに来て)

千寿は発信機を見ながら、毎日のように祈った。しかし、山田は一向に現れなかった……。