第十三話:クリスマスの約束~過去編~

その頃1000年前の世界では……。

山口館の千寿の部屋に、三人の人物が集まっていた。一人は勿論、この部屋の主・千寿だが、他二人は殿様の側近・相良武任と怪しげな南蛮人・ザビエールであった。この奇妙な取り合わせは何を意味するのか?

千寿はまるで殿様のように、偉そうに上座に陣取っており、南蛮人と相良は二人してその前にかしこまっている。

ザビエールが何やら分らん南蛮の言葉をぺらぺらと話す。すると、相良が、

「あーー、ええーー、この南蛮人が申しますには、御館様がお側に千寿様のような……えーと、その……」

千寿は手にした南蛮渡りの望遠鏡で相良の頭をぱこんと叩いた。

「あ、痛た……」

「痛た、じゃないよ! 何度やったら出来るの? いい加減に覚えて!!」

相良は必死に額の汗を拭いつつ、十幾つの無礼な子どもの横暴に耐えている。

何しろ、相手は御館様のご寵愛第一。機嫌を損ねるような事になれば、どんな告げ口をされるか分らない。

「面目次第もござらん……その、御前でこのようなことを言うのは気が引けるので……」

「相良様、あなたは南蛮人の言葉まで分る役に立つ人材。それだけで殿様は大喜び。話してるのは南蛮人なんだから、恥ずかしがることなんかないんだよ」

「いや、しかし、それがしには南蛮の言葉はさっぱりで……」

「だからーー分る『ふり』をするだけだと。いったい、何度言えば良いの? とにかく、最初の二言だけ諳んじてれば、あとはもう何もしなくていいの!! 分ったと思うけど、この南蛮人は言葉が話せる。相良様なんていらないの。それを、わざわざ、『お役目』を作ってあげたんだよ」

「はあ。それはわかっております。有り難いことで」

「そうだよね? 感謝すべきだよ。とにかく、この日一日だけ宇部に帰りたいの。殿様のお許しが欲しいんだから、ちゃんと口裏合せて協力してくれないと困るからね!!」[br num="1"]「わかりましたとも。それで……その、千寿様をお助けしたら、本当にこちらにもお力をお貸し下さるので?」

「ああ、しつこい!! 言ったよね? あの陶隆房は上から目線で、人を人とも思わぬナルシストで、勝手に受けから攻めに変わって……」

「は?」

「あ、いや、その、傍若無人で傲慢で、殿様の権威を笠に着てやりたい放題。以前からずーっと腹に据えかねてる。これを機会に追い出してすっきりしたい」

「そうですとも!」

ここだけははっきり通じたし、意見も一致した。

「でも、相良様はどこか抜けてるからなぁ……今の殿様に十言っても一くらいしか聞いてもらえないよ。あいつを陥れるには、もっと下準備をしないと。ぐうの音も出ないくらいやっつけてやるから」

「……」

現寵童と元寵童の関係が友好的であろうはずはないが、陶隆房が「あいつ」呼ばわりされるほど嫌われていたとは……。相良は百万の味方を得たような気分になった。

「そうしたら、二人して殿様を操れるよ? だって、二人とも『お気に入り』だもの。だけど、軍事部門だけあのナルシスの言いなりだから。そこも手に入れる」

「な、なる? ……とは?」

相良は恐る恐る尋ねた。山田に会ってからこの方、相良でなくとも、千寿の言葉は相手に通じない。

「あーー。もう、分らなくていいから。とにかく、今書いたことをきちんと覚えて、上手くやって。もっと空気読んで下さい」

「承知致した……」

「本当に? まあ、どうでもいいや。最悪、ザビエールが一人でやるから。その分相良様の旨味は減るけど、仕方ないよね? 先ずは殿様のところにこれを持って行って。こっちのほうがよほど大事」

そう言うと、千寿は相良に向けて何やら書状を投げつけた。

要するに、出て行け、と言うことだ。

相良は千寿から託された書状を手に、コソコソと部屋を出て行った。

「アタマワルイ。シンパイデスネ」

ザビエールが肩をすくめた。

「あと一日あるから、何とか覚えられるでしょ。ああ見えても、馬鹿ではないし」

「ワタシアタマイイ。ミンナオボエタネ。コレミンナクダサイ」

ザビエールは千寿の部屋に積まれた金銀財宝の山を指差した。

「上手くいかなかったらあげない。それから、約束通りの品を持ってこないとダメだからね」
「モチロンワカッテイマーース」