足利家防長出張所

うーーん。庭園だけではなく、「天守」とやらまでも建てろ、と。まったく、どこまで横暴なのだ……。先々代に比べて、我らが義隆様のお優しかったこと……。いや、単に仕えやすかっただけであるな。仮にも「当主」であったのだから、優しいなどということはあり得ぬわ。そう言えば……あれこれと我儘なお方であったし。むむ。そんなことより、問題は金じゃよ。元の御館様が官位を買うのと寺社に付け届けをするのとで、金蔵を空にしてしまっておるのだからなぁ。鶴と千寿も、アイドル稼業には飽きてしまったようであるし。どうすれば良いのかの。元々、金のある連中であるから、働く必要もないわけで。面白くなくなれば、当然やる意味がないことだわな

こんにちは

表の貼り紙を見たのですか? ここはアイドル紹介所、顔の良い悪いはどうあれ、まずは年齢が……おおっ

すみません。道に迷いました。山口宇部空港に戻りたいのですが

く、空港?

はい。京都に帰るのです

京都? (む、もしやして、これも管領だとか、その息子だったりしないであろうな?)もしやして、お父上は……その……

父はいません

おお、これは……早々とお父上を亡くされたのですな。お気の毒に

いいえ。父は私が要らなかったので、養子に出したのです。父も、養父も死ねばいいと思います。これ、使ってくれませんか?

な、なんですか、これは? 人形ですなぁ……。しかし、見てくれの悪い。藁などで作らずとも。ん? 名前が……右京大夫?

養父です。毎晩呪っています

いや、その……これはお返ししましょう。宇部空港まではだいぶありますので、タクシーを呼びますから、お引き取りを

気味が悪い小僧だ、関わり合いになると面倒だから追い払おう、そう思いましたね?

な……(ま。まさか、この小僧あの千寿よりも頭が冴えるのではないであろうな。わしの考えていることを見抜くとは……)

気が変わりました。京には帰りません。しばらく、ここで働かせてください。さもないと、あなたが、主のことを、面倒だとか、横暴だとか、陰で罵っていることをすべて告げ口しますよ

なな……

私は十三歳未満ですし、兄もギリギリ十六歳です。「やんごとない身分」の常として、お忍びで、こういう下々の遊びをやってみたいのです。兄上、お入りを……

あ、兄!? (細川政元には何人養子がいたのだったかな? しかし、告げ口されるなどと脅されては……いったいどうしたら……オドオド)

そのほうが、ここの責任者か? その、あいどるとか申す者、面白そうなので、しばし扮してみたい。よきにはからえ

よ、よきにはからえ!? いったい、あなた様は?

聞かぬが身のためである。履歴書とやらは用意してある。後程目を通しておくが良い。まずは、宿所の手配を致せ

……(意味は不明だが、ひたすら呆然)

さて、澄之から二人分の履歴書を受け取った相良武任はその場で気を失った。さすがの悪徳役人も、将軍様とナルシストな当主を秤にかけたら、やはり将軍様が怖い。将軍と言えども、相手はこのような「子ども」。相良ほどの狡猾さがあれば、恐れるに足らぬように思えるが……。そう、この相良が最も苦手としているのが、文字通り、千寿をはじめ、このような「子ども」であった……。